むっしゅたいやき

懺悔のむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

懺悔(1984年製作の映画)
3.8
故人への政治責任の追及。
テンギズ・アブラゼ。
『祈り三部作』の掉尾を飾る作品であり、スターリン主義への批判と絡めて紹介される事の多い社会派ドラマである。

個人的にアブラゼ作品の魅力は、強度の高いショットは勿論乍ら、寓意に富んだ物語に込められた様々なテーマの集合に有ると考える。
本作に関しても、ざっと浚ってみても「独裁政権に因る恐怖政治の波及性」だけで無く、「人間誰もが抱える原罪」、冒頭に述べた「故人の政治責任追及の妥当性」、「故人の罪過に対し、家族が連帯責任を負う事の妥当性」と云った点が挙げられよう。
言ってしまえばアブラゼの作品は、鑑賞者の切り取り方次第で傑作にもなれば、凡作にも成り得るのである。

扨、153分の尺の多くを、両親を故人に殺害された女性のナラタージュに依って構成されている本作は、「恐怖への従順さ」と云う人間の本質的弱さを孕みながらも展開する。

本作は他のアブラゼ作品と比して、稍政治色が強い作品である。
この為、個人的嗜好からは少々外れており、スコアにはその評を反映させている。
ただ、スターリン主義への批判をその儘アネクドートとはせず、英雄主義を排し、ケテヴァンの偏執的執着を含めて映像作品として昇華した点は評価したい。

クストリッツァの作品と同じく、表面上ユーモアの皮を被ってはいるが、その裏からは搾取され続けたジョージア国民の哀しみが揺曳する作品である。
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