あんがすざろっく

ヒートのあんがすざろっくのレビュー・感想・評価

ヒート(1995年製作の映画)
5.0
名優同士の激突、こんなふれこみに興奮できた時代が、確かにあった。恐らくこの作品は、その斜陽の始まりに奇跡的に登場した。
アル・パチーノとロバート・デ・ニーロ。
その並びを見ただけで、どれだけの映画ファンが胸躍らせただろう。
かつてのポール・ニューマンとスティーブ・マックィーンのように、製作陣の本腰の入れ方と気合が、ビシビシと伝わってくる。
作品はプロの強盗集団と、彼らを追う敏腕刑事達の攻防を描く、シンプルな作りだ。
ハイエナのような嗅覚を持ち、家庭より仕事を愛するヴィンセント刑事ことパチーノと、孤独に生き、危険を察知したら30秒で消える犯罪集団のリーダー、ニールことデ・ニーロ。幸せな所帯を持つには不向きな二人は、やがて互いの存在が自分の身近に迫りつつあること、相手に自分と似た匂いを感じ取る。
しかしいつかはどちらかがどちらかを仕留めなければならないと気付いていた二人。
お互いの意地とプライドと命を懸けて、運命の対峙へと向かう。
書いてるだけで熱くなってくるじゃねぇですか‼︎
公開当時のキャッチコピーが「荘厳なる戦場へ」ですよ。
連れて行って下さいよ、その戦場へ‼︎
その戦場を描いたのが、映画中盤のロサンゼルスでの銃撃戦。このシーンでの音響(銃声や荒い息遣い)が素晴らしいんですよね。パチーノとデ・ニーロに負けんばかりの熱演を見せたヴァル・キルマー、それから作品に華を添えたヒロインも素敵で、ニールと恋に堕ちるイーディ(エイミー・ブレナマン)との出会いも痺れるし、当時大好きだったアシュレイ・ジャッドも、子役から脱皮し始めていたナタリー・ポートマンもイイ。
主演二人の共演シーンは、はっきりとは映らないものの、それでも大満足。観る前の期待度と、観終わった後の満足度の落差が激しい映画もあるけれど、本作はその温度差が極めて低かった。それだけで大好きになれる。この後、豪華競演の作品もたくさん出てきましたが、(パチーノとデ・ニーロの再競演作もありましたが)、その熱量と力強さで本作を超える作品は、僕の知る限りありません。

追記:キャッチコピーの「荘厳なる戦場へ」は、同じくマイケル・マン監督、アル・パチーノ主演の「インサイダー」でした。なんで勘違いしたんだろう…。でもこのキャッチコピーカッコイイし、「ヒート」で使われてもいいと思ったけどなぁ。
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