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新・猿の惑星のMASHのレビュー・感想・評価

新・猿の惑星(1971年製作の映画)
4.0
シリーズ3作目。色んな意味で全てを破壊した『続・猿の惑星』。3作目を作れと言われたとき製作陣も困っただろうに。ストーリー的にも予算的にも苦かっただろう中で、この映画は1作目とはまた違うベクトルでクレバーにシリーズを繋いでいるのだ。

今作の主人公は、1作目と2作目で主人公をサポートしてきたチンパンジーのジーラ博士とコーネリアス博士。なんやかんやあって猿の惑星から脱出した彼らが辿り着いたのは現代(1970代)のアメリカ。彼らが拷問を受けるなどの胸糞展開を予想していると、前半はまさかのコミカルなタッチという。

人間がパニックに陥り、猿である彼らを迫害するという単純な構造にしがちなところを、この映画はもう少し多角的にキャラを配置している。友好関係を築こうとする科学者に、猿の進化から人類の未来を憂う科学者。好奇心で近づくマスコミに、未来より大衆の目を気にする大統領など。また、人間の生活を満喫するジーラとコーネリアスは可愛らしくもあり、1作目以上にキャラに感情移入していく。それがより後半の悲劇性を強めているのだ。

猿と人間の立場が逆転した世界を描いた1作目から、今作では更にその逆転を描くという、ある意味元通り(?)の世界をシミュレーション的に描いた本作。舞台を現代に移したことで、より当時の世相を反映した本作。有色人種への差別、あるいは障がい者への非人道的な扱い、人間の持つ優生思想の醜さと恐怖を妙にリアルに感じ取れる。1作目とテイストはまるっきり違うが、現代の人間社会への警鐘という根っこはしっかり続いている。

ラストの展開は割と早くに読める上に、クライマックスはダラダラしてると感じる部分もある。だが、オチ自体は個人的には凄く好き。逃れられない進化の軌跡を見せられ、安心とゾッとする気持ちが同時にやってくる、そんな絶妙なエンディング。あの2作目からよくここまで持ち直したなと感心してしまうほど。だが、あと更に2作もあるというのだから、なんとも脚本家泣かせなシリーズである。
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