たりほssk

めぐり逢う朝のたりほsskのネタバレレビュー・内容・結末

めぐり逢う朝(1991年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

16世紀から17世紀における宮廷作曲家マラン・マレとその師でヴィオロン奏者のサント=コロンブとの関係を、芸術家としてのあり方を軸に描いています。
最初、ジェラール・ドゥパルデュー演じるマレの表情がとてもインパクトが強くて一気に引き込まれます。「私は偽善の徒だった…」と自らを悔恨し、師であるサント=コロンブを回想する形で話が進みます。
そして最も印象に残ったのは、最後のサント=コロンブの言葉です。(結局この言葉が冒頭のマレの悔恨につながるのです。)
言葉で語れないものを語るのが音楽であるから、それは俗世のものではない。従って音楽は王のものではない…また言葉を語る神のものでもない。音楽は言葉を失った死者への贈り物なのだ…というようなことを彼はマレに伝え、自分の曲をマレに託します。この論理がとても印象深かった。サント=コロンブは俗世を離れ、亡くなった妻の面影を追いながらひたすら自分で自分自身の音楽を突き詰めていきました。そしてこのような境地に達したということがとても重要に思えました。何か一つのことを苦悩しながらも突き詰めていって、ある時新たな高みに達するということが確かにあり得るような気がします。それは他者からの評価等とは全く違う次元にある、自分との闘いなのだと思います。

またどの場面をとっても中世の絵画になるような素晴らしい映像、厳かで静謐なヴィオロンの調べは本当に美しいものでした。
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