広島カップ

鬼婆の広島カップのレビュー・感想・評価

鬼婆(1964年製作の映画)
4.5
時は南北朝時代、人の背丈以上に伸びたススキの野原を舞台にしたホラー作品。正確には怪談というべきかそれとも奇譚か。

こんなに見事なススキの野原をどこで見つけたのかと思って観ていたが、DVD特典映像を観たら千葉県印旛沼のほとりの今の安食(あじき)付近だった。私が小学生の時に友達と釣りに出掛けて見事にボウズに終わった懐かしい?場所。スタジオなど使わずに全てここで撮り切ったよう。
ヤブ蚊だらけで大変だったろうに、乙羽信子も吉村実子も全裸でそこを走るシーンなんかがあってご苦労様でした。

そのススキ野原の中に奴がいる。
よく米国のホラー映画に背丈以上のトウモロコシ畑の中に怪物がいる、なんていう設定があるがそれらはみんな本作をパクっているのではないかとも感じる。

暗闇にススキが風になびき海のように唸るそれと粗野な登場人物達を写すライティングが素晴らしく不気味な効果をあげている。
ヤブ蚊だらけのその土地に食欲、性欲、人の生死がレアな感覚で晒されて摩訶不思議な世界を醸し出している。
蚊取り線香の臭いもして来そうな、世界に誇っていいホラー...いや日本映画にしかできない怪談あるいは奇譚。
暑い夏にお勧め!
広島カップ

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