真鍋新一

スポイラースの真鍋新一のレビュー・感想・評価

スポイラース(1942年製作の映画)
2.8
小林旭が回顧録の中で自身のアクションの原点になったと書いていたので観た。あのアキラのパンチは豪快さはジョン・ウェインから来ていたのだった。

ジョン・ウェインのパンチは見ればわかるがとにかく野蛮。そしてそして重い。まともに食らって立っていられる人間はまずいない。そんな彼と、彼よりひと世代上のスター、ランドルフ・スコットが延々と、お互いボロボロになるまで殴り合う。

ヒロインはマレーネ・ディートリッヒ。彼女がいるだけで画面全体が輝く。昔の映画が持っていた力というかオーラというか、そういうものは楽しいのだけど、話自体は西部劇でよくある金鉱の利権争いで、アメリカ人にとっては切実なテーマなのかもしれないが、あんまり話を細かくしすぎると、ロケーションの雄大さに対して話がみみっちくなってしまい、こちらとしてはイマイチ乗り切れない。

無法者だらけの西部劇では特に重要な「法と秩序」の問題も一応は提示される。ジョン・ウェインも一旦はそれを守る。しかし結局はブチ切れて文字通りのアウトローへ。もちろんそれに対して責任を負うことはない。据え膳を絶対食う男、ジョン・ウェインをディートリッヒが全力でビンタする場面のような主張がもっとあれば良かったのにと思う。

ただ、走らせた汽車を実際にセットに突撃させて脱線させるのはすごい。でもすごいのはそこと例の殴り合いの場面くらい。娯楽路線の西部劇こそケレン味が命だと思っていたのだが、一部の名作をのぞいて、どうやらそこを疎かにする凡庸な作品のほうが大多数らしい(だからこの映画もそんなに語られることがない)。
真鍋新一

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