「映画名作ランキング」等の常連であるも、「古いし白黒だしな~」と思って長らくスルーしていた。
が、最近、結構昔の映画を観る機会も出てきたため満を持して鑑賞。
結果、普通~~におもれ~~。
本作、映画のほぼ全編が陪審員室の中だけで展開するという攻め攻めの構成。
言うなればワンシチュエーション・ソリッド・ミステリー(?)。
17歳の少年が起こしたとされる殺人事件の裁判。判決は12人の陪審員の全会一致に委ねられた。
状況証拠からすると間違いなく有罪(その場合少年は死刑)と思しき事案であるが、評決を取ってみると一人の陪審員だけ無罪を主張。
最初は鼻で笑われていた彼であるが、冷静沈着に状況証拠の懐疑点を指摘し始め、事態は思わぬ方向に進展していく。
っていう。。
ほんとそれだけの映画なんだけれど、十二人の陪審員たちが多様でバラエティに富む。
ロジカルに有罪を主張し続ける者、主役(?)の陪審員8号の論理の前に意見を変える者、日和見的に全体の空気に靡く者、自身の意見を明言しようとしない者、等々。
この陪審員室の一室に社会の縮図を見るようで、この小さな生態系を眺めているだけで面白い。
(時代のせいか、女性が一人も登場しないのは玉に瑕だが)
また、陪審員8号が、小さな針の穴に糸を通すような論理で有罪の状況証拠を少しずつ少しずつ切り崩していくプロセスは、現在の目の肥えたミステリーファンが観ても十分に楽しめる水準だと思う。
個人的にすごく良かったのは、陪審員8号が最初の投票で「無罪」を唱えた理由。
この時点で彼、状況証拠の穴を見抜いていたわけではないのよね。
彼が無罪を唱えたのは、「人ひとりの命がかっているからには、意思決定の前段で、一定程度「対話・議論」が必要だ」という考えによるんだよね。
これ、めちゃくちゃ誠実なスタンスですよな~。正しいか正しくないかではなく、プロセスとしての対話が重要というこの視座、現代社会においてもより重要となって来ている観点だと思いました。
ということで、観て良かった。面白かった。
今回の件を成功体験として、過去の名作はちょいちょい観ていきたいと決意を新たにした次第。