emily

父の初七日のemilyのレビュー・感想・評価

父の初七日(2009年製作の映画)
3.2
台北で働いているアメイは父の訃報を受け、田舎に帰る。7日後には叔父アイーの指揮の元葬式が執り行われる。葬式までの7日間の怒涛の日々を伝統的なしきたりと共にコミカルにつづるお葬式ムービー。

故人を7日間をかけて古いしきたりの元送り出す。台湾ならではの摩訶不思議な7日間が描写されており、紙銭を燃やし灰を流したり、缶のタワー、楽団、泣き女といわれる、常に泣けと言われたら泣かないといけない、非常に体力的にも疲れる役目を引き受けないといけない人がいたり、とにかく7日間非常に忙しいのだ。

そうして親が出席できないとかで、イトコの青年は卒業制作にとビデオを回している。それのためにポーズをとったりする人がいるなか、娘は父との思い出をふとした時に思い出し、その回想により父の人となりを徐々に見ることになる。時折回想に日本の演歌が使われたり、回想と今とのつなぎも独特な切り口で面白い。

ただ台湾の風習を見るだけでなく、万国共通の笑いが敷き詰められているため、非常に見やすく、ドタバタ劇と鮮やかな色彩に魅せられる。

とにかく葬式まで忙しく大変である。そうして色使いも鮮やかで日本の葬式と比べるとお祭りのような華やかさがある。正直悲しみに浸る時間なんて全くないのだ。だから、すべての儀式が終わり日常に帰っていく。一人になって初めてその喪失感と向き合うことになるのだ。それは突然やってくる。一人になり始めて向き合うことができる。葬式までの7日間張りつめてきたものがここでこぼれ出すのだ。誰かに作る顔ではなく、本当の自分があふれ出すのだ。そうしてその涙は誰かに死を受け入れるのに、必要な涙である。
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