映画大好きそーやさん

天国への階段の映画大好きそーやさんのレビュー・感想・評価

天国への階段(1946年製作の映画)
3.6
本質的な愛に対する追求と、その傍らにみえてくる戦争の不毛さ。
直接的にメッセージ性、テーマ性が伝わってくる描写が多いのは小っ恥ずかしく、陳腐なアプローチがなされているように感じるかもしれません。
確かに、そう受け取ることも可能で、全体的にもう少し捻ってみても良かったような気もします。
ですが、普遍的かつ大切な哲学を言葉として伝えてくれる本作は、確実に名作足り得る力強さをもっていたと思います。
戦争も、法も、何もかもを超越するのは正しく愛であると高らかに謳われることで、パートナーがいる人は自分を肯定してもらえたようで嬉しく思えるだろうし、今パートナーがいない人も愛することについて再度考えるきっかけになり得る作品になっていたのではないでしょうか?
愛が成就する、愛に発展することに対して、いまいちピンと来ていない人、はたまた愛に対して若干の恐怖感というか、ハードルの高さを感じている人には、愛入門映画としてぜひオススメしたい1本となりました。
また、対比的に調整されたルックも印象的で、天国をモノクロにしながら、地上をカラーで表現することによって、天国の異質さ、異界っぷりが存分に伝わってくるだけでなく、地上の実存感がより際立ってくるようでもありました。
天国のビジュアルが個人的にかなり好みで、特に死へと近付く階段は一押しのセットでしたね!
天国より使者がやってくるシーンで対象人物以外の時を止めるのは本作から始まっていった文化だそうで、現在の天国観?のようなものをつくるのに一役も二役も買っていたのかもしれないと、原初に近づくことのできた喜びに酔いしれる思いでした。
あと、制作された年が第二次世界大戦終結直後ということもあって、反戦的な要素を強く感じられるのは良くも悪くも心に来るものがありました。
終盤のシークエンスはそのメタファーと読み取ることもでき、言葉が重なれば重なるほど戦争の空虚さであったり、不毛さであったりが浮き彫りになっていくようで、愛の議論と共に胸を締め付けられる次第でした。
総じて、ルック面、美術面で地上と天国との対比、そして天国のビジュアルを堪能しつつ、根底にある愛の偉大さと戦争の虚無を目の当たりにする、そんな作品となっていました!