内縁の妻（岩下志麻）により、幼い兄妹の育児を押し付けられた男（緒形拳）が、無抵抗な子供たちに虐待行為を与えていく。松本清張の同名小説を映像化している、サスペンス・ドラマ。
大人の身勝手な行動に巻き込まれた子供の懊悩ぶりと、自分の行動に責任をもてない大人の混沌ぶりを、双方向から描いている作品。オルゴールをフィーチャーさせた劇伴が禍々しいムードを作っており、生身の子役に対する虐待描写にインパクトが備わっている。
一見では岩下志麻が絶対悪のように写ってしまうが、緒形拳の生活と威厳を保つために必要不可欠な存在でもあるため、「あげまん」という側面をもつ。傍にいて欲しい女性が「もしも狂ってしまったらどうなるか」という観点から鑑賞することができる。
独りでは何もできないダメ人間・緒形拳が、唐突に出現した子供たちと岩下志麻の板挟みに遭い、被害妄想と誇大妄想を昂らせていく。長男との心の交流から、切ないラストへの畳み掛けが見事であり、松本清張ならではの作家性が垣間見られる。
