ほーりー

嘆きのテレーズのほーりーのレビュー・感想・評価

嘆きのテレーズ(1952年製作の映画)
3.8
「嘆きのテレーズ」は文豪エミール・ゾラが1867年に執筆した「テレーズ・ラカン」を現代(1953年当時)にアレンジした作品で、不倫相手と共謀して夫を殺した女の顛末を描く。

のちの松本清張原作「黒い画集」を彷彿させるようなサスペンス映画。今観るとオーソドックスな展開なのだが役者陣の演技もあいまって見応えのある作品である。

幼くして両親を亡くしたテレーズ(シモーヌ・シニョレ)は叔母に引き取られ、いとこのカミーユと結婚させられる。

このカミーユは冷淡で自己中な夫で、おまけに妻への独占欲も強い男で、テレーズは彼との結婚生活に絶望していた。

そんな中、テレーズは夫の仕事場に出入りしていたイタリア人のトラック運転手ロラン(ラフ・ヴァローネ)と恋に落ちてしまう。

密会していた二人だったが、やがて夫に関係を気づかれてしまい、怒った夫はテレーズを連れて列車の旅に出る。

遠くの親戚の家に彼女を監禁しておけば、不倫相手も手出しできないと考えたわけだ。

彼女を連れ戻そうと追いかけたロランは列車内でカミーユと取っ組み合いになり、ついにカミーユを線路に突き落として殺してしまう。

……というストーリー。夫の死は誤って転落したことによる事故死として処理され、一旦はホッとした二人だったが、この後さらなる展開が起こる。

何といってもこの映画の一番怖いのが、テレーズの叔母でもある姑の存在。

カミーユのことを溺愛する母親で、息子の死のショックで倒れて口も身体も不自由になってしまうが、目だけははっきりとしている状態。

この目が怖い。

警察の取り調べから帰宅したテレーズを「お前が殺したな」という感じで睨み続けるあの目。他のレビューでも書いてる人が多いが、あの目には思わずこちらもゾッとした。

一方、夫の死体を見せられて感情的になるテレーズも印象深い。

「あなたはあのおぞましい死体を見てないから平気なんだわ!!」

愛したロランに対しても刺々しくなるテレーズ。死体はシートにくるまれて画面上には映し出されないが、いかに転落した死体が惨い状態だったのかよくわかる。

急転直下のラストも良い。

■映画 DATA==========================
監督:マルセル・カルネ
脚本:マルセル・カルネ/シャルル・スパーク
製作:レイモン・アキム/ロベール・アキム
音楽:モーリス・ティリエ
撮影:ロジェ・ユベール
公開:1953年11月6日(仏)/1954年4月20日(日)
ほーりー

ほーりー