グラビティボルト

戒厳令のグラビティボルトのレビュー・感想・評価

戒厳令(1973年製作の映画)
4.0
「役者を真っ直ぐ撮らない」
「切り返しを拒否する」映画の最高峰。
冒頭、汗ばんだ顔で佇む男が突然10数え初めて、ゆらりと歩き始めるショットからしてただ事ではない。
男が駆け出す瞬間、草履が揃って綺麗に脱げるショットの天才性にシビれる。

極端なローアングル、グラス越しに捉えられた女の顔、極端に左の空間を開けた階段昇降シーン、ラストの遠のいていく軍人、痛みを直感的に感じさせる剃刀のシーン、一言も口にしない息子、クーデターの映画なのに最早ホラー。すげぇよ吉田喜重。

こういう、「変なアングル」を単なる違和感や技巧の発露のみに留まらせない為に映画がすべき事は、人物の内面を徹底的にすれ違わせる事なんだなと。