思春期の少年少女というのは、恐らく1番難しい時期だと思います。子供と呼ぶほどもう幼くは無いし、また大人と呼ぶにはあまりにも未熟である。
その不安定な存在が持つ暗くドロドロとした部分を、少し乾かせたタッチで紡いでいく映像。
湊かなえのベストセラー小説が原作の、ある女教師の復讐譚ですが、この映画版も強い妖力で観る側を引きつけます。
劇中で使われるレディオヘッドの音楽も、不思議と作品の世界観に合っています。どちらも、「虚無」を感じさせるからでしょうか。透き通っているようで、実は明度の高い灰色の中にいた、と感じる空気感。
どの登場人物も、どこか歪んでいて、そしてどこか寂しい。でもそれぞれの「告白」を、なぜか感情移入して観てしまうのは、シンプルだけど大切なこと、「人間が描けている」からでしょう。
その意味で、この映画はサイコホラーともひょっとしたら呼べるかもしれません。
人間が1番怖い、特に愛する者を失った時の怒りに身を任せている時は。終始抑えた演技を見せる、復讐鬼と化した女教師役の松たか子からは、そんな思いも抱きました。
