竜平

息子の部屋の竜平のレビュー・感想・評価

息子の部屋(2001年製作の映画)
3.9
とある一家に降りかかる不慮の出来事、そこからの悲しみと再生を描く。イタリア産のファミリー及びヒューマンドラマ。

主人公である父親ジョバンニ役のナンニ・モレッティが監督・脚本も務めてる今作。もう見るからに幸せいっぱいに暮らしていて、それぞれ問題はちょいちょいあれどお互いを信頼し合ってるように見える家族、しかし悲劇的な出来事からその在り方が一変、という内容。父ジョバンニは精神科医で、彼のもとを訪れる患者たちがなんともクセありで、傍から見れば彼らの悩みなんてのは「取るに足らないもの」とも思えてしまうんだけど、ジョバンニはそんな他人の悩みを聞く立場から自分自身悩める立場へと移り変わってしまう。後悔、自身や現実への苛立ちなど、冷静で居れた過去の自分との対比が悲しみを誘う。ジョバンニの話だけにとどまらず家族それぞれも、生きていた日常、これまでにあった繋がりというものに苦悩していく。離れ離れになっていく心、これをあまりダイレクトには見せず、日常生活の中での「距離感」で見せてくるあたりがまた歯痒くて切ない。

今作はというと専門学校時代、18か19歳の頃に一度鑑賞して、その時も「なんかいい映画だな」と感じた記憶。本当に静かな映画なんだけど、丁寧でやり取りにもどこかリアリティーがあって、そんで悲しみ一辺倒かと思いきやどこかシュールで微笑ましかったり、更に温かさも感じれる。「もし違う選択をしていたら」的なシーンをしれっと差し込んでくるあたりとか、現実的な作風の中でおもしろい空気感も醸し出してたりして。まぁなんやかんや家族の物語にはグッと来てしまうよねっと。きっと彼らはここから受け入れつつ再生していくんだろうなと、そんな余韻を残すラストまで味わい深い一本。
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