さいごん

BALLAD 名もなき恋のうたのさいごんのレビュー・感想・評価

BALLAD 名もなき恋のうた(2009年製作の映画)
1.3
あれだけの名作だった戦国大合戦を実写化にして良くなった部分が一つも見当たらない。
一番の改悪は主人公二人の関係性。
戦国~の方では例え生きて帰って来ても二人は絶対に結ばれることはないし、二人の気持ちが周囲に気付かれることすらも許されないからこそ悲恋だった。
でも本作の方では終始二人がベタベタしていて、ラストなんてアレがなければ二人は結ばれていたという風にしか見えない。
じゃあ身分違いの恋でも悲恋でもなんでもなくて、単に死が悲しいだけという話に完全に変わってしまっている。

個人的に戦国~で一番良かったのはしんのすけに「何故好きなもの同士が一緒にいちゃいけないの?」という子供目線での無垢な疑問をぶつける役割を与えていたところ。
それがあるから身分違いの恋の理不尽さや悲しみが強調されていた。
本作の子役の方も同じような役割のようではあるものの、物言いのせいでただの差出がましい現代の価値観を押し付ける生意気なガキになってしまった。
そしてそれを二人も受け入れちゃうから余計に身分違いの恋というテーマから離れていく。

じゃあ実写化にして何が良かったかと言えば合戦シーンの絵面の派手さと言えなくはないけど人数が多いだけだなぁという感じ。
合戦中にセリフを挟むのも説明過多だし緊迫感は削ぐし間延びしてテンポも悪くなるんだから本当やめればいいのに。
どんなに映像は作りこんでもディテールが甘いから結果的に迫力でもリアルさでもしんちゃんにボロ負けじゃないか。

そもそもこの映画はコメディーなのかシリアスなのかバランスが悪すぎる。
コメディーと捉えると全く笑えないし、シリアスと捉えると話の荒唐無稽さだけがすっごく際立ってくる。
やっぱりこの話はクレヨンしんちゃんという映画だからこそ笑いと感動を両立させる絶妙なバランスで成り立っていたんだなと改めて気付かされた。
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