こたつむり

3人のゴーストのこたつむりのレビュー・感想・評価

3人のゴースト(1988年製作の映画)
2.5
♪ クリスマスキャロルが流れる頃には
  君と僕の答えもきっと出ているだろう

クリスマスが題材の映画ですからね。
正直なところ、あまり悪いことは書きたくないのですが…考えれば考えるほど良い部分が消えていく…そんなゴーストのような作品でした。

物語としては「捻じ曲がった主人公が心を入れ替える」という定番中の定番。しかも、主人公を演じるのはビル・マーレイ。嫌味なキャラクタを演じさせたら右に出る者はなし!くらいの鉄板です。

しかし、本作の場合。
軽妙な嫌味に重量感があるのです。
それってただの“凶器”ですよね。
「こいつ、本当にイヤな奴じゃね?」という想いしか浮かびません。

そして、それがカタルシス不足に繋がります。
心を入れ替えるならば、それ相応の“理由”が欲しいところですが、主人公の魅力が引き出されていないため、やたらとハードルが高くなっているのです。容易なことで心を入れ替える人間は、容易なことで元に戻るのですよ。

そして、それらの問題を誤魔化すように。
強引な“力業”で涙腺を弛めようとしてくる始末。その“あざとさ”が透けて見える演出に肩が下がるばかりでした。

特にヒロインの扱いは酷すぎますね。
僕はフェミニストではありませんが「男にとって都合に良いヒロイン」と批判したくなるほどでした。

まあ、そんなわけで。
本作を支配していたゴーストの正体。
それは下敷きとなった『クリスマス・キャロル』という小説かもしれません。この小説に慣れ親しんだ人が観れば、きっと脳内で補完することが出来たのでしょう。

だから、僕の持論である「映画に限らず娯楽は楽しんだ者勝ち」からすると今回は完敗。気持ちの中では2回7失点の先発投手の気持ちでした。リベンジ希望。

あ。でも。
林家パー子さんを彷彿させる《現代のゴースト》はツボでした。「きゃはー!」と笑いながら殴られるのはたまったものじゃないですね。
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