こたつむり

ターンのこたつむりのレビュー・感想・評価

ターン(2000年製作の映画)
3.5
♪ すぐそこに君がいる 
  この森の向こう側
  すぐそこに君がいる 
  出会えずに 気付かずに

ちゃんと、ちゃんとの味の素。
って、このネタが分かる人は齢がバレます(笑)松本人志さんが『ガキ使い』で物真似したことを知っていたら更にマニアックです(笑)

何はともあれ。
本作は“時の鳥籠”に閉じ込められた女性の物語…なんですが、確実に牧瀬里穂さんの、牧瀬里穂さんによる、牧瀬里穂さんのための映画。彼女じゃないと成立しないんです。

何しろ、主人公の造形が理想的過ぎます。
それこそ赤川次郎先生の作品のよう(註・本作の原作は北村薫先生)。

多少の躓きでは下を向かず。
不正を厭う正義感の持ち主で。
創意工夫で困難を克服する…それでいて美人で、スマートで、活発的で、内向的な趣味(彼女の場合、本業ですが)もあるから他人の機微にも聡い。そんな女性なのです。

正直なところ、誰が演じても無理ですよね。
どうしても嘘くさくなってしまうと思います。

でも、牧瀬里穂さんなら。
演技力とか存在感とかスターの資質とか、そういうものを超越したところにある透明感がカバーしてくれる…と製作者は判断したのでしょう。

ゆえに物語の透明度も摩周湖なみ。
ただの水素が並んでいるだけのように、不純物が見当たりません。

あえて言うならば北村一輝さんですかね。
ブレイク前なのに面白い存在感を醸し出しているので、そこだけが色づいていました。勿論、後年の活躍を知っているから抱く偏見かもしれませんし、物語のアクセントになっているので問題ないのですが。

まあ、そんなわけで。
優しいトーンで紡がれた、ちょっと不思議な物語。ひとつひとつの筆遣いが丁寧なので、受け手側も“優しい気持ち”で臨むことが大切です。少なくとも、したり顔で「ちゃんと、ちゃんとの味の素」と感想を書くのは間違っていますよね。
こたつむり

こたつむり