10年くらい前に観たきりだったので再見。
改めて観て、すごい作品だと思った。
家庭というコアコミュニティの崩壊は、多くの作品で描かれてる。でも、空間的にちゃんと崩壊を描けている作品は少ない。
『トウキョウソナタ』は画面として確かな関係性の断絶が映され、かつ肉体として表現されている。
対話が大事だ。アサーティブなコミュニケーションが大事だ。と言われるが、当事者の問題を当事者間で解決するのは難しい。心がけと技術で関係改善ができるなら、離婚問題なんて起こらない。
家族を崩壊させたのはリストラではない。内在化している問題がリストラによって表面化しただけだ。
また、家族に光が照らされたのは家庭内の出来事やコミュニケーションによってではない。個々に起こった偶発的な出来事によってである。
ピアノ、強盗、事故、国際情勢の変化、
ようするに、問題は外的要因によって浮き彫りになり、外的要因によって修復されたのだ。
とても、本質的だと思った。
関係性とは外的な何かによって、否応なしに変わっていくものだ。大切なのは変わったことに気づくことであって、手を加えることではない。
違和感のある行列。
役所広司の演劇芝居。
外から丸見えなピアノ教師の家。
とんでも国際情勢。
現実的なドラマに非現実的な要素を織り交ぜることで、説教臭くない映画的な世界に仕上がっている。黒沢監督の代表的な作品の一つだと思う。