るる

ペイ・フォワード 可能の王国のるるのネタバレレビュー・内容・結末

-

このレビューはネタバレを含みます

2017.10.30.
アンソニー・ラップの告発によって、ケヴィン・スペイシーの見方が完全に変わってしまったことをメモしておく。ケヴィン・スペイシーがゲイであろうとバイであろうとかまわないが、14歳の少年にセクハラ、と聞いて真っ先に、彼は大丈夫だったのだろうか、と、この作品のことを思い浮かべてしまったので、最悪。いつか見直したいとは思うが、最悪。


2015.12.

十代の頃に見たときは時系列をいじった演出を新鮮に感じながら面白く見たが、

ラストで主人公の少年が死んでしまったことに怒りを覚えた。

お涙頂戴じゃん! 死ぬ必要あった!?

でも大人になってから見ると、感じ方が随分変わった。キリスト教について知識をつけたからかもしれない。

虐待、アルコール依存症、親から子へ受け継がれてしまう負の連鎖を、断ち切るのではなく、正(生)の連鎖で救おうとする話なのだと思った。

子は親にしてもらったこと、してもらえなかったこと、されたことを覚えている。
幸せな家庭に育ったひとほど、自分が親になったら、子供にはこういうことをしてあげたい、自分がしてもらって嬉しかったから、自分がしてもらえなくて悲しかったから、自分の子供にはこういうことをしてあげたい、と理想を持つ。

機能不全家族の中で育つと、「きちんと機能している家族」がどんなものかわからないという。
理想の家族像、理想の子育てがわからないから、わからないままエスカレートすると、虐待やネグレクトに繋がる。

親の悪癖が子に受け継がれてしまうのは、「他」を知らないからだ。
辛いときにアルコールに頼って依存症にまでなってしまうのは、アルコールの他に頼る方法を知らないからだ。

同時に、人は、親にされて嫌だったことを自分の子供にはするまい、とも考える。
親の悪癖に自分は決して感化されないようにしよう、とも考える。

虐待されたトラウマはそうそう癒えない。消えない。
親がアルコールで堕落した姿は子供心にショックなものだ。トラウマになるほどに。
だからこそ。

そのあたりのことに、誠実に向き合った映画だと思った。
虐待経験のある教師の慟哭が刺さる。

主人公の提案。
不幸を受け継ぐのではなく、幸福を受け継ごう。
なるほど、画期的なアイディアだ。

その彼が子供同士の喧嘩で殺されてしまったことはあまりにも唐突であまりにも悲しい。

キリスト教的にいえば、あの子は天使だったのよ、ということかもしれないが、
子供が突然、命を奪われるのは別段、珍しいことではないのだとも思う。

プレティーン同士の喧嘩、何も悪いことしてないのに、というショックが大きいので、作劇上の無理やりな展開に感じたが、言わんとすることはわかった気がした。

断ち切れる連鎖もあれば、途切れない連鎖もある。

灯をともす映画なのだな、と思った。ろうそくを気にしながら見て、ラストシーンで、連なるろうそくの灯の列に涙してしまった。

お涙頂戴には違いないが、よくできてると思った。
無常で無情なこの世の中にハッピーエンドは存在しないが、
小さなハッピーと、癒やしと赦しを信じよう、ということかもしれない。
るる

るる