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楢山節考のほーりーのレビュー・感想・評価

楢山節考(1983年製作の映画)
3.5
大杉漣もそうだが、左とん平も亡くなったというのがまだ実感がわかない。
間があいてしまったが、とん平さん追悼でこの映画をチョイス。

深沢七郎原作の同名小説の二度目の映画化で、パルムドールを獲得した今村昌平の代表作のひとつ。

オリジナルの木下恵介版は山奥の貧しい村での〝姥捨て〟という怖い風習を歌舞伎の様式美で表現した異色作だったが、リメイクである本作は今村らしく〝セックスと飢え〟をテーマにした全く別の作品になっている。

濡れ場のオンパレードなので、苦手な人は苦手な映画だと思う。でも一番キョーレツだったのは蛇がネズミを丸飲みするシーンだったりする。

個人的には、子が愛する母親を山に捨てるという残酷さはオリジナルの方がちゃんと描かれているような気がする。

本作では緒形拳と坂本スミ子(特殊メイクで老け役)が主役の母子を演じているが、本当の主役は緒形の弟を演じた左とん平じゃないかと思う。

村のしきたりで次男坊であるとん平は結婚することができず、おまけにヒドイ歯槽膿漏で口が臭くて女が誰も寄ってきてくれないという始末。
終いには、性欲に我慢しきれず、近所のメス犬に夜這いをかける日々を過ごす(犬がかわいそう笑)。

中盤以降、あまりの欲求不満でおおいに荒れ狂うとん平。ここまで来ると〝性の喜びおじさん〟クラス。

ラストは緒形が坂本を背負って楢山に捨てに行くのだが、とん平のくだりが強烈すぎてあまり印象に残っていない。

個人的には、むしろ泣きたい人だったらオリジナルの木下版の方がオススメだと思う。

倍賞美津子との濡れ場で「ウワー、ウワー」と連呼している小沢昭一センセ観ていると、何なんだこの映画はという思いが込み上げてくる。

ちなみに劇中に登場する年頃の娘っ子で緒形の息子と、それこそ性の喜びを謳歌している女性が登場するのだが、これが漫才コンビのすず風にゃん子・金魚のにゃん子さんの若い頃というのがびっくり。

演芸ファンじゃないと誰それ?って感じかもしれないが。

■映画DATA==========================
監督:今村昌平
脚本:今村昌平
製作:友田二郎
音楽:池辺晋一郎
撮影:栃沢正夫
公開:1983年4月29日(日)
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