真鍋新一

風に逆らう流れ者の真鍋新一のレビュー・感想・評価

風に逆らう流れ者(1961年製作の映画)
3.7
流れ者シリーズ最終作。
今回はジョーが欠席だが、その代わり、射撃の名手という設定が白木マリのほうに振られているのが面白い。ライバルは神山繁で、前年に三島由紀夫の『からっ風野郎』で殺し屋役を怪演していたオーラを引き継いでいる。

父親役の信欣三がいくら悪党に弱みを握られているとはいえ、娘の浅丘ルリ子をダマして敵陣に乗り込ませるのは流石にひどい。日活アクションで被害者になりやすい真面目系クズの系譜である。

オープニングクレジットが終わる前にもう襲われているルリ子や、タイトル前に特撮の見せ場があるなど、いつものことながら山崎徳次郎監督作はサービス精神がすごい。浅丘ルリ子と白木マリの温泉入浴シーンがあり、その塀の向こうでは男湯でアキラが「ダンチョネ節」を歌っているという、神々がくつろいでいる姿を描いた宗教画でも見ているような気分である。マリに至ってはいつものキャバレーでのシーンに加えて、ダンスのリハーサルをしているレアな場面まである。

ドラマ面では、いつもはバーのカウンターで空気になっていることが多い楠侑子の出番が多く、ルリ子と義理の姉妹になっているという設定もあってか、かなりドラマに食い込んでくる。衣装のバリエーションも多く実に素晴らしい。藤村有弘は例によってインチキな日本語を話す香港人の役だが、その役回りも少し捻りが効いていて話を盛り上げてくれる。

毎回ダラダラ長々と書いているけども、話の筋も出ている人も毎回ほぼ同じなので、ちゃんとその作品だけの良さを細かく書き記しておかないと、どれがどの映画だかわからなくなってしまうのである。
真鍋新一

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