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ももへの手紙のSHIMABOOのレビュー・感想・評価

ももへの手紙(2012年製作の映画)
3.5
 俺は見ての通り『人狼』のファンなので、そして勿論沖浦さんの絵も好きなので、話が地味だの脚本がアレだのといった、この映画の悪口はいっさい書かない。

 美術の所為で何やらジブリもどきと勘違いされることも多いようだが、キャラ作画は完全に正統派リアル系の紛うことなき沖浦アニメ。特にクローズアップ・ショットでの目元や口元の造形において顕著だが、『攻殻』『人狼』といったリアル系作品(今は全く途絶えてしまった)同様の緻密な人体描写はやはりスゴイ。また一方で、(コミカルな描写など)本来あるべき姿である伸び伸びとしたアニメーションとの折衷を図っているのも見てとれる。その意味では、これこそが日本のアニメーションのひとつの到達点であると言っていい。てゆーかコレ、普通に2時間楽しめるアニメです、ホント(オススメ!)。

 …前言撤回。「自然光の美しさ」が全く見られないのはいくら何でも致命的だ。やはり画面が妙に地味過ぎなんである。『人狼』みたいな昭和30年代の東京じゃないんだし。晴れてるのか曇ってるのかよーわからんような光量のノッペリとした、モノが画面に張り付いた感じがいちいち気になる。また『人狼』よろしく影を省いて肌の彩度を落としたキャラデザだが、それとて本作において効果的だったのかは正直疑問。もっと生き生きとした色鮮やかなルックの方が、この映画には合うんではないかな…というのが正直な感想。
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