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GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 4Kリマスター版のSHIMABOOのレビュー・感想・評価

5.0
 大好きな作品なので、ビデオでなら繰り返し見てはいるが、やはり劇場に観にきて良かったとオープニングからして思った。まずファーストカット。シンプルなCGの立体マップに表示される2機のヘリ、ズームイン。そこからスムーズにセルアニメに切り替わり、パンダウン。すると数百階はあろうビルのへりに草薙素子が佇んでいるというシーンだが、セル・パートでのフィルムの粒子が、ビデオで見た時よりもかなり粗いことにまず驚いた。しかし古臭いといった感じでもなく、あくまでもデジタル特有のバキッとした過剰にクリアな印象を回避し、フィルムの上品な質感を保つという意図だろう。つまり現在の最新技術で最適なアップデートがなされている。こんな幸せな映画は少ないだろうし、アニメーションでなら尚更そうだろう(そういえば『カリオストロの城』もリバイバル上映が近々かかるようですが)。

 さらに特筆すべきは、光の当たらない空間を塗り潰すマットかつ艶やかな暗闇と、それに支えられる階調豊かな光だ。有機ELテレビの新機種のコマーシャルで、『攻殻』の4Kブルーレイをそれで上映して押井がコメントをするという企画の記事があった。それで押井が発言しているように、光と闇の表現はスクリーンに映写するという形式でないと(例の有機ELはその限りではないようだが)さしあたっては十全に成し遂げることは出来ない。それ自体が発光する携帯やPCのモニターでは完全な暗闇は実現不可能なうえ、乳剤の魔力のたまものである光のグラデーションは0と1に変換されて不細工な縞模様に変わってしまうからだ。これは我々でも今回のIMAX上映を観ればすぐに理解できる。

 そして夜が明けると、漢字の看板で埋め尽くされたエキゾチックな町と、それを取り囲む未来的な高層ビル群が立ち現れる。分かってはいたけども、奥行き方向の情報量が本当に圧倒的で、また感動。あと、(これも劇場で観て初めて確認できたのだけど)奥の風景には適度に白っぽいボカシがかかっており、空気感の表現に細心の注意が払われていることに(何度目か最早分からないが)感動。

 このような画の素晴らしさの他にも、押井映画おなじみの長弁舌(必殺・衒学迷彩!)から、そこから否応なしに考えさせられる、生命と実存といった本作のテーマまで、語ろうと思えばいくらでも語れる”中身”もこの映画には詰まっている(そしてそれを語るにはこのサイトのページは小さすぎる)。というわけで是非とも劇場でご覧あれ。
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