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レミニセンスのSHIMABOOのレビュー・感想・評価

レミニセンス(2021年製作の映画)
3.5
 SFの皮を被ったフィルム・ノワール。確かに総力戦の傷を感じさせる水没都市と、『エイリアン』の冬眠装置のような見た目のガジェットと思わせぶりな要素はあるものの、メロドラマと謎解きが主体のストーリーにおいてそれらは単なる背景でしかない(例の装置も、絵的な理解のしやすさを助ける以上の役割は無い)ので、正直この話ならSFじゃなくても良くないか…という気がしないでもない。しかしまあ、昔懐かしの古典的プロットに、撮影監督ポール・キャメロンによるセピア調の見事な映像という2点を俺は「別々に」「両方」楽しめたので観ていて退屈することはなかった。一応SFとして全くダメダメというわけでもなく、ラストには「この映画そのものがヒュー・ジャックマンの記憶想起に過ぎなかった」という、映画全体にわたるモノローグの正体と自己言及的なSF的抒情が(とってつけられたような気もするが)添えられている。まあ初監督でこれだけのものを作ったなら大したもんでしょう。

 なによりキャスティングで間違えなかったのもデカい。男を堕落させ犯罪へと誘う魔性の女、ファム・ファタールにレベッカ・ファーガソン。いかにもハリウッドスタア的な美貌で映画のルックを支えている。そして彼女に魅了され、堕落していく男にヒュー・ジャックマン。これ以上にベストなカップリングは考えられないぐらいに両社とも見事にハマっている。ポリコレにうるさい今のハリウッドなら、まかり間違って片方をアフリカ系にしかねないことを考えるとこの辺は結構頑張ったんじゃないかと(別にルッキズムという訳ではなく、この40年代的なお話であればこういうキャスティングにするしかないという意味で)。
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