自分は何故かスコセッシの作品が肌に合わないのだがこれだけは別。代表作中の代表作である本作の出来はやはり伊達ではない。
デ・ニーロ若いなぁ。そして、ジョディ・フォスターの12歳とは思えない大人の色気(だけど幼さも秘めている)に驚く。
トラヴィスのモノローグには淡々としながらも不思議な魅力があり、反面、映像では次第に狂っていく彼の変貌ぶりが描かれており、これがいい対比になっていて面白い。
ピーター・ボイル扮する同僚ドライバーが良いことを言った。
「人間、その仕事をずっと続けると、それが自分そのものになっちまうんだよ」
人、特に文明社会に生きる人にとっては何かに帰属しないと身がもたないように思う。
一番、人間が帰属しやすいものそれが職業であるが、劇中でのトラヴィスはタクシードライバーという職業に完全に帰属しきれていないように感じる。
結局、トラヴィスを狂気に駆り立てたのは、大都会の中で何も自分が身を寄せることができる存在がなかったからかもしれない。
ラスト、再びタクシードライバーに戻ったトラヴィスは身を寄せるものが見つかったのだろうか。一瞬、バックミラーに映る彼の狂気を秘めた表情が意味深だった。