ビターチョコ

タクシードライバーのビターチョコのネタバレレビュー・内容・結末

タクシードライバー(1976年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

男女は違う。
体が違うし、脳(の一部)が違うらしい。
ところで、同じ人でも、同じ一日の中で気持ちや態度が「コロコロと」変わるものだろう。たとえば、空腹の時と、満腹になった時とでは、大好きな食べ物が違って見える。満腹になると、見るのも「におい」も嫌になる。

また、貧乏な人が、突然に金持ちになったら、いろんな事に対する考え方、つまり見方が「とても大きく変わる」んじゃないか?

■さて、本題。
この映画は特殊な映画。
孤独な男性向けの映画で、愛する妻子のいる男性や、平凡な女性が観る映画じゃないと(私は)考えている。

<あらすじ>
孤独な若い男がいる。友人も彼女もいないし、生きる目的は特に何も無い。タクシードライバーの仕事をして夜の都会を走るが、人間社会に絶望している。そんな時、彼は、選挙活動をしている知的で美人の女性と出会う。一目惚れだ! 身なりを整えてデートに誘う。すると彼女がOKしてくれた。
「ああ、人生ってなんて楽しいんだ」
しかし、楽しい時間は続かない……。

<主人公はどんな人?>
若い男性だ。低学歴で、将来の希望もない。でも、何かでっかい事をしてみたい。「俺ならできるかも?」なんて思いながら、地味に仕事を続けている。女性の扱い方を知らないし、資格をとって高収入の仕事に就きたいと考えたこともない。何も無い、何も努力をしていないのだ(本当になにも)。

孤独な男が、この映画を観て思うのだ。
「この映画の中には俺がいる!」
「なんで俺そっくりの奴が、この映画の中にいるんだ!?」
「あいつは俺だ!!!」
そう思った人だけが、この映画を楽しめるんじゃないか?

<ネタバレ>
ラスト、主人公は、彼をふった女性と再会する。女性は、タクシードライバーが「あの男」と知った上で乗ってくる。
あの頃とは変わった。
いま男は、ちょっとした有名人だ。
社会的に認知されて、日々がなんだか楽しい。
そんな時、過去の女(?)と再会したわけだ。

ベッツィが、トラヴィスに親しげに話しかける。いろいろ興味があるようだ。しかしトラヴィスにとって、ベッツィはもう眼中にない。
いまは…、
「次に何をするか?」
「もっと、もっと、でかいことやるぜ!」
なんて考えながら毎日を生きているのだろう。
だから、ベッツィからタクシー料金は受取らない。

男は変わった。
何もかもが変わった(そんな気がする)。
だが、彼は今も孤独のままだ。
今日もタクシードライバーを続けてる……。

そんな男たちが、この映画を何度も観るのだろう。

妻子がいて、仕事にも家庭にも、地域社会にも恵まれた男性は、「この映画を再見しよう」とは思わないだろう。もし観たとしたら、「こんな男にはなりたくない」と思いながら観るのだろう。

さて、私はこの映画に満点をつけた。
もう何年も観ていないが、またいつか観るだろう。