ベイビー

暗殺のオペラのベイビーのレビュー・感想・評価

暗殺のオペラ(1970年製作の映画)
4.0
ベルナルド・ベルトルッチ監督作品。

やけに画面が四角なぁ、と思ったら1970年に作られたTV映画だったんですね。それにしては映像やシナリオの質が非常に高い。とても面白い作品でした。

時は1936年ムッソリーニによるファシズム政権下の時代、北イタリアの田舎町タラの劇場で、反ファシズの活動家だったアトスが何者かによって暗殺されます。その事件後、アトスは町の伝説的英雄に。

それから20数年後、父親の容姿と名前をそっくりそのまま受け継いだ主人公のアトスは、かつて父の愛人だったドレイファスから、父親の死の真相を突き止めるよう依頼され、タラの町に呼び出されます…

正直、この冒頭が分かりづらい。

演出のせいか、脚本のせいかは分かりませんが、父親も息子も同じ"アトス・マーニャ"という名前で、両方とも同じ俳優さんが演じていますから、観ていて今どっちのアトスの話をしてるのか最初はピンときませんでした。

物語は30年前の父親の時代と息子の居る現在とを行ったり来たりしているのに、その時代の判別の仕方は父親の首に巻かれた赤いスカーフのみ。まるでコントみたいです。その赤いスカーフだけが判別の目印なのだと分かるまで、まるで状況が掴めず頭が混乱してしまいます。

しかしその仕組みが判ってからは物語を追うのも慣れてきて、どんどん深みのあるサスペンスに引き込まれていきます。

とにかく映像が美しいです。北イタリアの古い街並みや風景。そして終始映されるのが、青々と生い茂る深緑一面の鮮やかさ。森の緑、庭園の緑、作物の緑、並木道の緑、町全体が緑…

気付けばその緑がメタファーになっているんですよね。タラの町全体で秘密を覆い隠しているという暗喩。その暗喩を伏線とし「マクベス」と絡めた結末は本当に素晴らしいと思います。

あの男の子だと思っていた子が実は女の子だったというシーンも、きちんと深読みしたら後々犯人を突き止めるヒントになっているんですよね。要は180度ものの見方を変えないと、ことの真相に辿り着けないということ。

そして最後の草が生い茂るカットで終わるのは最高ですね。あの町の不思議さや不気味さを残してのエンドロール。それはあたかもアトスが迷宮に迷い込んだかのように、タラという町自体が真実を藪の中に隠そうとしています。とても印象に残る終わり方です。冒頭の分かりづらさを取り除けば、本当に面白い作品になっていますね。

あと、ライオンはファシズムの象徴として描かれているのはよく分かるのですが、あの父アトスがライオンと対峙するシーン、やり過ぎじゃないですか? っていうか、イタリアではライオンも食卓に上がるのですか? そもそもライオンを食べたら美味しいのでしょうか?

う〜ん。少し興味はあるものの、あの顔を見たらきっと食欲無くしますよね。
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