♪ さよならは別れの言葉じゃなくて
再び逢うまでの 遠い約束
一時代を築いた有名な映画。
…の筈なのに、とても変な作品でした。
冒頭から主人公がブリッジして登場。
更には表情が分からない遠景の多用や、障害物を挟んでの撮影、薬師丸ひろ子さんをクレーンで吊ってコンクリートに入れるなど…よく分からない演出が目立つのです。
でも、それだからなのか。
1981年の作品なのに古臭く感じませんでした。確かに色調や粒子は「THEアナログ」と言った感じなんですが、センスがぶち抜けているのです。
また、主人公を活かした筆致は見事な限り。
本作で気付いたのですが、女性を魅力的に撮るために大切なのは洋服のサイズ。ほんの数センチの違いが作品に影響するのですね。まさに“瑞々しい”とはこのことを言うのでしょう。
これが相米慎二監督の手腕。
話によると女優さんに厳しい御方だったようですが、それもこれも“素材を活かすため”と考えれば納得。今の時代では無理かもしれませんが、芸術の分野に限って言えば「アリ」だと思います。
あと、昔の映画と言えば大御所の若かりし頃。
本作で「お」と思ったのは柄本明さんですね。飄々とした感じが新鮮でした(最近はクセのあるお爺ちゃん…という印象が強いですから)。
他にも光石研さんも出ていたようなのですが、遠景が多くて分かりませんでした。柳沢慎吾さんは声が特徴的なんで分かりやすいんですが。斉藤洋介さんも気付かなかったな。
まあ、そんなわけで。
往年のアイドル映画…と思って臨むと驚く作品。赤川次郎先生の軽妙な原作が下敷きとは思えない鋭敏さは一見の価値がありますので、歴史を学ぶような姿勢で臨むことをオススメします。
最後に余談として。
伝説の「か・い・か・ん」よりも印象深かったのは、薬師丸ひろ子さんが銀座をぶらぶらと歩く場面。なぜか衣装はセーラー服に赤いハイヒール。これは違和感の塊でした。地下鉄の風でマリリン・モンローばりの「OH!モーレツ!」も同様で、子供が無理矢理“大人にさせられた”ような気持ち悪さがありましたね。