ひゅうどんこ

無法松の一生のひゅうどんこのレビュー・感想・評価

無法松の一生(1943年製作の映画)
4.7

(※勝新版雑記含む)
 元々は懸賞応募作、それが文壇で話題になり、映画化され、小倉(北九州)という自治体の名物にまでなった題材。
それも阪東妻三郎主演のこの映画があったればこそ。
ネームバリュー絶大な阪妻が好演話題となったことで、本作が残した足跡は、とても大きかったのですね。
 
 吉岡夫人役を務めるのは園井恵子。未完の大女優と形容される悲劇の人(スゴ過ぎますわ)。
あとは、重要な役どころに宮口精二、沢村アキヲ😏、月形龍之介という布陣に、最強のスタッフですから、当時の事情でバッサリはさみを入れられようが色褪せるはずもなし。

 ひとつ前のMarkレビューで勝新版を挙げてましてその時は記憶が曖昧で気付かなかったのですが、その後あらためて阪妻版を観直してみると、勝新版がいかに偉大な初代への敬意を払って忠実にトレースしようとしたかが解りました。
セリフもカット割りも、驚くほどに同じ。

 三船版と三國版は未見ですが、本作と勝新版については「あの人がこの役をやったらどうなるのかな⁉」という夢のような願いをまんま叶えてくれます。 

 世の中に「分をわきまえた野獣」はあまたでしょうが、阪妻の演じたこんなに切ない野獣を超えることは誰にも出来ないでしょうね。

 私、勝新大好きであっちも素晴らしい熱演でしたが、最重要シーンの眼がギラツキ過ぎて生々し過ぎて見ていられず、その分のマイナス点をこちらに加点しました。