岡田拓朗

レオン 完全版の岡田拓朗のレビュー・感想・評価

レオン 完全版(1994年製作の映画)
3.9
凶暴な純愛。

完全版を鑑賞。
とても渋くてクールなかっこよさを感じられる作品だった。
それだけでなく、意外とヒューマン要素も盛り込まれていてアクションシーンは予想よりは少なかった。

レオンとマチルダの関係性、出会うことに違和感のない設定から2人が出会い、関係が深まっていくことによる相互補完、レオンの成長に繋がるもそれこそが死に繋がる理由になったことの切なさ、そして感動。
映画としてのよさが詰まっているような作品でもあった。

レオンはニューヨークで孤独に暮らし、プロの殺し屋として、トニーの依頼を受けて、それを遂行していく日々を送っていた。
そこに人間らしさはあまり感じられず、感情もないように見えたが、それでも何不自由なく自分にストイックに生活をしていた。

隣人のマチルダは父親から暴力を受けたり、自分を押し殺されながら日々を送っており、家族に対して憎しみを持っていた。
そんな中、ジョセフが麻薬密売組織の「商品」を横領したことを見抜いたスタンスフィールドとその一味がアパートに乱入し、スタンスフィールドはマチルダ以外の家族を容赦なく射殺。
家族の中で唯一大切にしていた4歳の弟までをも射殺され、マチルダは復讐を決意する。

レオンの家にやってきたマチルダ。
レオンは初めは少し経ったら追い出そうとしたが、マチルダは仲間になることを提案し続け、一人で仕事をしたいと伝え続けていたレオンも折れて、2人は一緒に暮らし、仲間として一緒にトニーの任務を遂行していくようになる。

大人であるレオンと子供であるマチルダ。
強面で凶暴そうなレオンと子供らしい可愛らしさと愛嬌のあるマチルダ。
ただし、2人の性格はそのイメージとは真逆で、レオンは本当に純粋でマチルダに対して優しく娘のように、部下のようにマチルダを大切に可愛がり、マチルダはそのレオンの想いを受け入れつつも決して自分を曲げずに命までもを惜しもうとしない芯の強さを兼ね備えていた。
また、ミルクを飲むレオンとワインを飲むマチルダ、タバコを吸わないレオンとタバコを吸うマチルダ…この逆転現象がこの映画ならではの登場人物の描き方で好き。
まさかのこの設定で、違和感を感じないジャンレノとナタリーポートマンの演技力にも脱帽。
これがあるから2人が愛に発展したとしても、それも意外と違和感を感じない。

孤独なレオンがマチルダと出会うことによって生まれた人間らしさと人間としての他人を思いやる優しい心、喜怒哀楽の感情、感性。
邪魔だと感じていたマチルダがいつのまにか彼にとってなくてはならない存在となっていた。

並外れたレオンとマチルダの時にはパートナー、時には家族、時には恋人同士!?、のような関係に釘付けにされつつも、敵が大きすぎることによって自身の犠牲を悟り覚悟するレオン。
とてつもなくエモくて、とてつもなく切ないラストの展開。

人を思いやることを知らなかった孤独なレオンが、自分の命を顧みずにマチルダのために動いていくほどに変わっていったことへの感動は間違いない。
それでもマチルダと出会っていなかったら、レオンが死ぬことはおそらくなかったからそこにとてつもない切なさがのしかかってくる。

無駄が全くなく絶妙。そして心揺さぶられる。覚悟とは何なのかを問われる。
完成度がかなり高く渋くてクールな作品だった。
今作が多くの人に愛される理由がわかる!
これが洋画か!!
岡田拓朗

岡田拓朗