Morohashi

ブリキの太鼓のMorohashiのレビュー・感想・評価

ブリキの太鼓(1979年製作の映画)
3.5
ブリキの太鼓
端的に言って「生々しい」映画。
見終わった後、誰一人として共感できる人がいなかったことに気がついた。
誰かの視点で映画を見ていた、ということが全くなかった。

唯一、途中からやってきた住み込みのお手伝いさん(マリア)にだけはちょっと共感できた。彼女は最も人間味があった。
アグネスも人間くさいところはあったけれど、そもそも3人で夫婦生活をする決意をするということからして、価値観がかなり私とは違うと感じた。

この映画の最大の醍醐味は、3歳の視点で世の中を見るということにより、いかに人間が愚かかを描き出している。
事実、大人たちは体は成長しているが、中身は全く成長していない。
人間は、なぜこうも、不合理なことを選択することが多いのか。この映画を見ていると、刹那的な感情に囚われすぎて、後先を考えずに失敗するケースがとても多いと思った。
とはいえ映画は長く、正直テンポが見るのがつらかった。。

さて、途中、アグネスがドイツ側につくか、ポーランド側についていくか、選択を迫られる場面がある。(この場面のために3人で生活しているようなもの)
パワーを選ぶか、愛情を取るか。彼女の中ではもう、答えは最初から出ていたんだろうけれど、最後まで選べなかったっていう。ときにはこういうのを運任せにする「じゃんけん」みたいな解決法も、後腐れなくていいのかもしれないな、と思った。
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