ナガノヤスユ記

祇園の姉妹のナガノヤスユ記のレビュー・感想・評価

祇園の姉妹(1936年製作の映画)
3.5
最近の気分としては、いわゆるミゾグチ的と解釈されるところのショット至上主義というか、こだわり抜かれた文体の仕事みたいなものに少し距離を置きたいのだけど、だからこそあえて見る。結果、最近の日本映画は、シークエンスショットをやや過剰に、好意的に解釈しすぎだと改めて思う。ひとまずこの作品においては、男どもが何やら不穏な集団主義に堕していくような時代の空気がまずあって、そんな暗澹たる雰囲気がまとわりついた男女のメロドラマがベースにある。欲望と見栄に身を滅ぼされていく人間たちの予知夢。前世紀的な義理にしがみつく姉も、時代の空気にのまれて感傷を露わにする妹も、生き残り方を選べなかったのは同じ。