Fumi

スモークのFumiのネタバレレビュー・内容・結末

スモーク(1995年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

新文芸坐ってのがいいなぁって思います。
池袋の街はいつまで経っても、どれだけネオンを増やしても、うすぼんやり煤けているみたいで、まさにNYのなんでもあり、という雰囲気とも交差するよう、どことなく感じられて。

初見の時、煙草のけむりほどの重さの、それぞれの嘘、みたいなことに想いを馳せた気がします。

人がそれぞれ生きていくなかで、立ち現れてくる、"よれ"のようなものは、煙の重さほど些細なことだけれど、それだからこそ私たちは、私たちとして生きていく皺のような、言い換えれば実感とでも言うのでしょうか、を、それらがやはりとても愛おしいんですよね。

だって、手垢のついたお金を押しつけた友だちから聞いた、クリスマスにカメラを盗んだ話を、君はいいことをしたんだなんていうなんて、めちゃくちゃじゃないですか。

すごい詩情ですよね。

それを敷衍して、私たちの日々に立ち現れてくるそれぞれのよれも、心から愛おしいと思える、クリスマスの魔法も手伝って。

クリスマスに新文芸坐に映画なんか、観に来れない人たちのための映画だよなぁって思いながら、そういう世界で生きていた、オースターが、クリスマスくらい、煙草の煙に埋もれた、やつら、私たちが救われる話があっていいはずだって、編んだ物語、映像化すること、それだけで功績ですよね。

トム・ウェイツやスクリーミン・ジェイ・ホーキンスたち、小道具も手伝って画面いっぱいのセンスの良さがかっこいいなぁって雰囲気を作ってくれるし。


17歳の煙の重さほどのどうしようもなくなった嘘が、印象的で胸を痛めるけれど、その後にオーギーのクリスマスストーリー(嘘)があって

手垢のついたお金は、自分の娘か、本当はわからない人のために使われていく。

嘘が優しくて、私たちは嘘や、本当のことに傷ついて、軽い魂が、簡単に吹き飛んでしまう。けれどそうやって、小さな感情で、嘘で、優しくし合うことが、出来るのだ、それはいつからでも。
今からでも。と暖かい気持ちになれるのが本当に素晴らしいところだと思います。
Fumi

Fumi