オレオレ

ゼア・ウィル・ビー・ブラッドのオレオレのレビュー・感想・評価

4.0
20世紀初頭、石油が今ほど目の敵にされていなかった、どころか一攫千金の手段として崇められていたころの話。たった100年ちょい前の話なんだよなあ。

ダニエル・デイ・ルイス演じるプレインビューが井戸の中で一人、鉱石を掘っているシーンから始まる。最初の15分間一切セリフなし、掘る音と緊張を高める効果音のみ。
井戸のハシゴから落ち、足を骨折するプレインビューだが、一人で這い上がり、一人で添え木をし、見つけた金だか銀だかを一人で交換所に持ち込む。交換所の床で換金を待つ間に床に寝転がってる(骨折しているので)が、めちゃくちゃふてぶてしい・・・。誰も頼らず、自分のことしか信じていない感じがよく出ていると思った。

そのうち、オイル掘削を始めたプレインビューのところにポール(ポール・ダノ)と名乗る青年が現れ、オイルが出る場所を知っているからその情報を買ってくれと持ち掛ける。周辺ではのちのオイルジャイアント、スタンダードオイルが土地を買いかけているとの情報もあり、ポールに金を払ってその土地(ポールの実家)を見に行くと、ポールの双子、イーライ(P.ダノ二役)が家族と暮らしている。
自分はクリスチャンで息子もいる家庭的な男だ、正直者だ、などと口八丁手八丁で土地を安く買いたたくプレインビュー。連れている息子はそのための小道具だ。そして、イーライが牧師をしている教会への寄付ももちろん約束するが、すべてはオイルが眠っている土地を買うための方便。
結局オイルは眠っており、井戸もオペレーションも拡大するが、寄付を取りに来たイーライをぶん殴って約束を反故にするプレインビュー。そこから人生をかけた二人の対決が始まる・・・

DDLはもちろん、この童顔P.ダノや子役の配役が良かった。
特にP.ダノは、悪魔祓いをパフォーマンスしては信者から崇められている預言者と自称するインチキ牧師で、見るからに童顔で気の弱そうなP.ダノと、宗教を隠れ蓑にした腹黒さの対比が抜群。

「おれは人間が嫌いだ」というプレインビュー。その「人間」には自分自身も含まれているが、血のつながってない息子は別だったんじゃないかなあと思う。後半で息子に、「お前には俺の一部分も入っていないんだ!」と見下したように言い放つが、入っていないからこそ、息子のことは本当は愛してたんではないだろうか。事故で聴力を失った息子を車内に置き去りにして列車を降りるシーンや、その息子がろうあ学校から戻ってきて二度も長く抱きしめるシーンを見ているとそう思えた。
だからこそ、インチキだとはわかっていながらも、悪魔祓いをやるP.ダノが息子の聴力を戻すという奇跡を起こせないことからも、P.ダノへの嫌悪感が高まる・・・

二人の対決シーンもなかなか強烈で、殴られたP.ダノは地面のオイルが混じった水たまりに引き倒され、頭からオイルまみれに。その後、教会の信者の土地をどうしても欲しいプDDLは、インチキクリスチャンだと見破っているダノから洗礼を受けることに渋々了承する。今度は、DDLの頭に水がかけられる(洗礼にしては水分多すぎ)。プレインビューには何のありがたみもない水、オイルのためだけの洗礼。

最期のボウリング場のシーンは賛否両論あるみたいだけれど、かといって、他にどういうエンディングが良かったかと思うとなあ・・・
絶縁した息子が帰ってくる?オイルマネーがすべて消える?ハッピーエンドも嘘くさいし、成金に罰が下るエンディングもどうかと思うし。
監督がP.T.アンダーソン、このコンビでやった「ファントムスレッド」がめちゃくちゃわけわからんかったのだが、今回の映画はまだ理解しやすかったかな。