ゆーさく

ゼア・ウィル・ビー・ブラッドのゆーさくのレビュー・感想・評価

4.0

「俺の長いストローはお前のミルクシェイクを全部飲み干す!!!」

劇中一番の名ゼリフ。

意味不明の言葉だが、意味不明が生む謎の迫力。
多分使い方としては、誰かを「搾取」する時に使うのだろう。


アカデミー賞で主演男優賞と撮影賞を取ったとの事だけど、まさにそこが見所。


舞台は1910年代のカリフォルニア。

主人公は石油掘りを生業としている野心家の男ダニエル・プレインヴュー。

彼は、採掘中の事故で死んだ仕事仲間が残した赤子を自分の息子として育てながら、転々と旅をし続け、石油を掘り当てては富を築いていた。


しかし、富や権力を手にする一方で、息子が油田の事故により聴力を失うという悲劇に見舞われる。。。


歪んだ思想を持つ彼の、業にまみれた孤独な人生と、徐々に精神が破滅に向かっていく姿を描く大作。



もう何がすごいって主役のダニエル・デイ=ルイスね!


メーターを振り切ったド迫力の狂気演技もさることながら、血の繋がらない息子への不器用な愛情表現にも深みがある。

息子に対して、慈愛に満ちてる瞬間もあれば、ビックリするぐらい冷酷になったりもして…

そのビミョーなニュアンスの変化の演技など緩急自在!



この映画においては、あらゆる登場人物が主役ダニエルの引き立て役に過ぎないのだが、その中でもひときわ輝きを放つ、ミスター引き立て役がポール・ダノ演じる宣教師イーライだ。


ナメクジのように脆弱なのにやたら偉そうで、おまけに胡散臭い小僧。
つまりポール・ダノそのもの。

そして毎度毎度ダニエルにケチョンケチョンにヤられるサンドバッグっぷりも見事!
時代劇で言うところの名斬られ役。




富も権力も手にしてしまったダニエルが最後まで求め続けたのは、他人との「繋がり」。
でもその一方で彼はその繋がりを疑ってもいる。

誰かとの精神的な繋がりを欲しがってるけど、繋がろうとしてくる者への猜疑心がダニエルの中には常に渦巻いている。

自分を裏切らない、自分を見捨てないそんな人間を求めながら、そのくせ他人の事は信用出来ない。

だから、繋がりを求めているくせに、自ら他人との繋がりを断ち切ってしまうような矛盾した行動を取ってしまう、何とも哀しい男である。


ラストまで観れば分かるけど、彼は全部、自分から繋がりを切ってしまう。全部自分でダメにしてしまうのだ。
ゆーさく

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