めしいらず

ベルリン・天使の詩のめしいらずのレビュー・感想・評価

ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)
4.8
全編が詩によって語られたような映画で、それは「去年マリエンバートで」を観た時にも同じように思ったのだけれど、あちらにはどこか人を寄せ付けない冷たさを感じたのに対して、本作には共感と癒しに包まれるような温かさがある。天使を介して私たちに届く同時多発的な人々の心の声。どの苦悩も不安も不満もが詩篇の朗読を聴いているよう。天使はその一つ一つに耳を傾ける。そっと寄り添い肩を抱く。時に前向きにさせることがあるけれど、概ねどの人にもそれは届かない。天使の中に堆積する無力感。ある日に見かけたブランコ乗りの女への恋。彼女の悲しみを生身で受け止め慰めたい。そして元天使の俳優に導かれるようにして天使は地上に降り立つのだ。人になった彼に彼女がカメラ目線(おそらく全ドイツ人に向けて)で語る言葉を私はよく理解できないけれど、時と場所からしてベルリンの壁を越えた東西の結束への願いが込められていたのだろうと思う。

子供は子供だった頃、
腕をぶらぶらさせて歩いた、
小川は川になればいいのに、
川は急流になればいいのに、
水たまりは海になればいいのにと。

子供は子供だった頃、
自分が子供だとは知らず、
どんなものにも魂があり、
すべての魂はひとつだった。

子供は子供だった頃、
物事に対する意見などなく、
癖もなく、
足を組んで座ったり、
駆けまわったり、
髪にはつむじがあって、
すましもせずに写真を撮られた。
(ペーター・ハントケ「幼年時代の歌」より)

再鑑賞。
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