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国士無双のotomisanのレビュー・感想・評価

国士無双(1986年製作の映画)
4.0
 道でばったり出会ったカモが実はタカだった。食い詰め浪人二人組がこのぼんやりカモを将軍家の剣術指南、伊勢伊勢守お忍びのひとときと偽って人をたぶらかそうというのだが、なぜかそんな狐も狸も偽りを被った伊勢守も、本気で伊勢守になってしまった「ニセの守」にやっつけられて敵わない。
 カモらしく空からやって来たというニセの守が既にしてまともな人でないのは確かだが、この、名前も人任せ、衣食住も丸抱え、人助けに当たるも他人の懐任せ、自力では何も整えないのに自力で動き出すとやくざの出入りまで魔法的に収めたりなぜかピタリとはまる。
 こういう手合いを観てると「ものくさ太郎」みたいな貴人流離ばなしを想像するが、コテンパン伊勢守の禅譲にも目も呉れず美枝子をさらってゆく辺り、まさに都の貴人を掃滅できなかった武家の力の及ぶところで無いと覚える。で、なんで雪だるまに化けるか?となるともう想像も及ばないが、まことにタヌキなおもちゃのような映画である。此度、中井、堺、岡本、火野、美枝子、杏子、笠、ニセ狼まで得てこんな塩梅で再現された。次は何時誰が試みるか楽しみだ。
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