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女の水鏡のotomisanのレビュー・感想・評価

女の水鏡(1951年製作の映画)
2.0
 松本清張以前の贈賄者サイドのあれこれ、舟橋聖一による社長に追及の手が伸びる前夜から控訴断念に至るまで。
 そんな渦中で、愛を求める社長とこころ揺れる愛人、証拠隠匿を幇助する部下と検事への色仕掛けを拒んだ女、令嬢が替わって仕掛ける色事を揺るがず受け止める担当検事、このように示しただけで大清張ワールドなのに聖一ノワールはどこかお出汁が効いていて三組の男女の成り行きが妙に情緒的。しかも正義が罷り通るし、令嬢と検事が本気で出来上がるしでなおさら鬱陶しい。
 しかし、そこはそれ、かかる恋愛三相のおのおの正反もまた合なりで悲喜こもごもなのが男女の仲であって、賄賂だの不正献金だのなんて世のならいと興味無しな聖一ワールドである。三年喰らっても社長の座は待ってますからと令嬢は思うのだろうが「暴動島根刑務所」を見たあとでは社長の明日は暗いなぁ。

 外野の感想はさておき、愛と恋の前では、男女に立場の差と連れない仕打ちとで正反隔たるところがなんぼあろうと屈しはせんという聖一力に此の映画がいまいち着いていけてない?こいつは監督がダメなのか役者がゴボウなのかカネが足りないのか。
 父を改心させ恋の成就した秀子が暢気そうに覗き込む水たまり。月明りに映える水鏡の内なる濁りに気付きもしないなら、聖一以下、大は昭電事件をはじめ疑惑の問屋、安井都政の七不思議を胡散臭く見つめる世間に着いて行けてない事の証しのようではないか。現実に汚職を誘う社長たちの不正を糺すのに愛を失った末のこころの弱りを誰が期待しただろう。
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