かずぽん

チャップリンの黄金狂時代のかずぽんのレビュー・感想・評価

チャップリンの黄金狂時代(1925年製作の映画)
4.5
【いま観てもアッパレな名シーンの数々 特撮もあり】

監督・脚本・製作:チャールズ・チャップリン(1925年・米・73分・モノクロ・サウンド版)
原題:The Gold Rush

ゴールドラッシュに沸くアラスカ。
孤独な金鉱探しのチャーリー(チャールズ・チャップリン)は、雪深い山で猛吹雪に遭い、今にも崩れ落ちそうな小屋を見つけて転がり込む。そこにはお尋ね者のブラック・ラーセン(トム・マレイ)がいたが、やがて同様にして金鉱探しのビッグ・ジム・マッケイ(マック・スウェイン)も小屋に避難してきた。
寒い上に食べる物もなく、カードをめくって一番小さい数字を引いた者が食料を調達しに行くことになり、ブラック・ラーセンが小屋を出て行った。飢えがピークに達したビッグ・ジムには、チャーリーがニワトリに見えるという幻想が訪れ、チャーリーを食べようとする。

空腹のあまり靴を茹でて食べるシーンは、可笑しみの中にも優雅さの漂うシーンだ。チャーリーが、靴の革と底部分を(まるでそれが肉であるかのように)ナイフとフォークで切り分けて、自分とビッグ・ジムのそれぞれの皿に置く。靴紐はスパゲッテイのようにナイフでクルクル。実にそれらの所作が美しい。(革部分は海藻で、靴紐はイカ墨スパゲッティ。トリの骨のようにシャブっていた釘は飴細工だという。)

人の集まる所に町が出来て、山の麓の酒場は活気づき、美しいジョージア(ジョージア・ヘイル)に女たらしのジャック(マルコム・ウェイト)が言い寄っていた。酒場でジョージアに一目惚れしたチャーリーだったが、この出逢いが彼の運命にどのように影響するのか?
雪の山小屋のシーンは爆笑シーンが多かったけれど、ジョージアが登場すると一気に哀愁が漂い始める。

ストーリーそのものは覚えていなかったけれど、記憶にあるシーンばかりだった。あまりにも有名なシーンだから、ひょっとしたらテレビでやっていた映画の名シーン特集などで観たのかもしれない。
・吹雪に飛ばされた山小屋が崖に引っかかって、ギーコギーコとシーソー状態で絶妙にバランスをとっているシーン。
・2個のロールパンにフォークを刺して足に見立てて、それでダンスを披露。ミッキーマウスの足みたいなのが華麗にステップを踏んで実に表情豊か。
・特撮シーンと言うのは、悪党のブラック・ラーセンが最期を迎えるシーンで、崖が崩れ落ちてラーセンが雪崩と共に谷底に飲み込まれて行く。1925年にこんな技術があったとは…素晴らしい。
・例の山小屋で空腹に耐えている時、ビッグ・ジムが屋外に出て行くと、飼い犬も出て行ってしまう。次にビッグ・ジムが帰って来ると口をモグモグしている。チャーリーが慌てて犬を探しに行くというシーン。小ネタではあるけれど、見ているだけで状況や心情が伝わって来て、本当に上手いなあと思う。

本作のオリジナル版はサイレント映画だったが、私が観たのは1942年に再編集しチャップリンがナレーションを付けたもので、サウンド版と呼ばれているらしい。この再編集の際に、オリジナルには有ったラストのキスシーンがカットされたそうだ。
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