(2008/11/03鑑賞)
いい意味でも悪い意味でも期待を裏切らない作品だった。
多くの人が病院で死んで,人の死を身近に感じられなくなった現代に改めて死というものを考えさせられる映画である。人間は自分が死ぬのは怖く,身近な人の死は悲しい。できることならば人の死というものは遠ざけたいというのが人情だろう。
しかし,人の死というものは穢い,忌むべきものなのだろうか?
というように書くと,なんだかお堅い映画に感じるかもしれないが,こうしたテーマをユーモアを交えながら軽快なテンポで描いている。
結局,葬式などは死んでしまった人のためにやるのではなく,生きている人達のためにやるものである。葬式をして故人とお別れをするということは,いつまでも悲しんだり悔やんだりするのではなく,故人の死を受け入れて残された人たちが生きていくためのものなのだ。
遺体を拭いて,布で隠しながら死装束に着替えさせる,死化粧をして,納棺する,こうした納棺師の世話がなければ,遺体がとても痛ましく目を向けられなくなってしまうかもしれない。残された遺族が故人の死を受け入れて,気持ちよくお別れするのに,こうした納棺師の演出が助けとなるわけである。
やはり,納棺師というところに視点が置かれているのがおもしろい。
生前の故人との関わりがなく,故人に対しては思い入れがない分,遺族のために尽くせる。それは,クライアントと主人公の身近な人を納棺するときの違いを見ればわかる。身近な人の場合,自分の個人的な感情抜きには死には向き合えないんだな。
それにしても,山﨑努の演技は素晴らしかった。