アーリー

ロレンツォのオイル/命の詩のアーリーのレビュー・感想・評価

4.5
2023.2.9

実話を元にした話。不治の病である副腎白質ジストロフィーを発症した子供とその両親の奮闘を描く。

病気ものにありがちなお涙頂戴の感動ものではない。残された日々を大事に過ごそうとか、そんなんでもない。子供の病気を治すため、医者でもない親が治療法を見つけ出そうとするのを、待ち受ける困難と共に描き出す。こんな行動力や頭の良さを持ってる親は見たことない。息子のために仕事も、自分すらも投げ出して身を捧げるその姿に、驚きと感銘を受けた。しかも完全に治すまではいかへんものの、ある程度症状を和らげるオイルを作ることに成功。とんでもない人たち。映画ではそのオイルを発見するまでがメインに扱われてたから、日々がダイジェスト風にすぎていくけど、もちろん現実では1日は24時間で、日々弱っていき寝たきりになっていく息子を世話するのはめちゃくちゃ辛かったはず。何回泣いたんやろう。何回自分を責めたんやろう。前作に引き続き出演したスーザン・サランドンの演技も相まって心にくるものがあった。

患者は延命を望んでいるのか。自分の意思に関係なく薬を投与され、苦しい日々が続くのを本人はどう思っているのか。心臓の病気で入院し、機械によって無理矢理生かされてたじいちゃんを思い出す。本来の生命活動では心臓は止まっているのに、機械で無理矢理動かしていた。とんでもなくでかい機械がじいちゃんのぱっくり開いた胸の中に入り込んでる光景は忘れられへん。財団の男性が心折れてしまうのも無理はない。
食事制限のあたりもそう。三ツ矢サイダーが大好きで、よく飲んでたじいちゃん。それが原因で心臓が弱なったのかなんなのかはわからんけど、入院中は禁止されてた。ある日一人でお見舞いに行った時、俺が持ってた林檎の炭酸ジュースをどうしても飲みたいって言われて、散々迷って結局飲ましてあげた。当時はこれがさらに病状悪化させたらどうしよって思ってたけど、今思い出すと飲ましといて良かったなと思う。もし拒否してたら今頃めっちゃ後悔してたかも。たぶんじいちゃんの人生の中で、最後の炭酸ジュース。飲んだ後の笑顔とありがとうは忘れられへん。息子に好きなものを食べさせてやれないお母さんの心情はもっと辛いはず。どっちにしろ後悔が残るかもしれない選択は悲しいな。

映画的には、テンポが良くてスッと観れる。ノンフィクションやからドキュメンタリーになってしまいそうな気もするけど、トライアンドエラーの繰り返しな夫婦の奮闘とか、周りの変化や支えとか、メリハリのある演出でちゃんと映画になってたと思う。ロレンツォが何も出来なくなっていくのを見せすぎひんかったのも良かったかな。辛すぎて映画に集中できひんくなる。感動させにいくような作品作りじゃなかったのも良かった。少なくとも俺はそう感じた。ジョージ・ミラーこんなんも撮れるんや。カメラワークはちょっと変な感じがしたけど。

最後まで諦めなければ必ず奇跡が起こる、とまでは思わない。けど奇跡というのは起こるのを待つんじゃなくて、自分から起こしにいけるということを教えてくれた。
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