ぬーたん

震える舌のぬーたんのレビュー・感想・評価

震える舌(1980年製作の映画)
3.8
夕飯の支度をしてたら、旦那が映画を観ていて(なんか古そうな邦画観てるぜ)いきなりきゃーという甲高い声が!画面を観たら幼い女の子が口の周りを血だらけにして…エクソシスト?オカルト観てんの?と思いつつ夕飯の支度に戻る。そしてその後観終わったら『泣けたよ。可哀想で‥』あれ?ホラーではなかったのね。タイトルを聞いて調べたら、破傷風になった女の子の話らしい。気になって、早速観たよ。あのシーンは破傷風による痙攣で舌を噛んだところだった。震える舌、なるほど。
3人家族は団地に住み、少女はすぐそこの草むらで泥で遊んでいる。そして指を怪我する。私も子供時代の一時、団地に住んでいた。マンモス団地でそのすぐ近くは元々あった田んぼが広がり、団地の子供が田んぼや泥地でカエルやザリガニを獲って遊んでいた。兄はいつもザリガニを獲り帰って来て、その泥が臭くて母に叱られていたっけ。その兄の友達が錆びた釘に足を引っかけて暫く放置していたら破傷風になったと聞いた。破傷風は怖いものだった。
40年前の作品。みんな若い!お母さんは十朱幸代。スラリとして綺麗。
お父さんは渡瀬恒彦。渡哲也の弟だが、最近まで兄だと勘違いしてた。3年前に72歳で亡くなった。渡哲也もつい最近亡くなった。イケメンで男らしい兄弟だったなあ。
少女は若命真裕子。わかめまゆこ、と読むらしい。珍しい名前だから間違いないとは思うが、調べたら現在は看護の仕事をしているそうだ。可愛い、というわけではないし、ほぼ寝たきりの役だが、とにかく凄い演技だった。演技と言うよりはやらされて本当に怖かったんじゃないかな?あの小さな体で縛られたり、血だらけ、痙攣、叫んで、もう気の毒なくらいだ。この子役の演技あっての作品だ。看護の仕事は今作の影響かな?
主治医は中野良子。懐かしい!あの細い目にクールな表情は女医にピッタリ。でもクール過ぎてちょっと事務的な印象もある。
医長は宇野重吉。いぶし銀ですな。寺尾聡にソックリ。というか聡が重パパにソックリなんか。
お婆ちゃんは北林谷栄。これまた好きな女優。『橋のない川』『坊ちゃん』98歳まで生きた大往生。
友人で蟹江敬三。69歳で亡くなったのがもったいない、良き脇役だったね。
日色ともゑ、加藤健一も懐かしい顔。
監督は野村芳太郎。
音楽は芥川也寸志。音楽が恐怖を盛り上げる。
ホラー映画より怖い、と言われた作品らしいが、子供を持つ親の立場からは、怖いというよりは辛い、観ていられない、という感じ。
病院内の様子を延々と映す、この親子と医者たち、身内は少し出るが、その他は何もなく、一貫した描きように、グッと来た。2時間、食い入るように観たよ。オヤツなし!
40年という月日を感じるような遅れた医療ではあるが、今またコロナで医療が混乱しているのを考えると、人間は常に新しい病原体の危機にさらされているのだな、と思う。
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