Ricola

男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎のRicolaのレビュー・感想・評価

3.7
今回の寅さんはまさかのお寺住まいを経験する。
帝釈天題経寺の前で掃除をしている源ちゃんはさくらから「門前の小僧習わぬ経を読む」と茶化される。
その「小僧」とは、皮肉にも寅さんにも当てはまるのだ。


法事を勤め上げる寅さんは得意の話術を発揮するし、とんでもない出会いが起こるし、寅さんは住職の格好が似合っているしと…いつも以上に笑いがたえない。

妙な巡り合わせに行き着いてしまった寅さんたちの、陰ながらのやり取りには特に笑える。挙動不審な動きや目が泳いでいるのとか、コメディど真ん中である。

おじちゃん役を少しの間務めた松村達雄が、寅さんのお世話になるお寺の住職を演じており、馴染みのある組み合わせのため安心感をおぼえる。
中井貴一演じる息子と住職はもめているが、娘の朋子(竹下景子)だけでなく寅さんがいるおかげで少しばかり和やかな雰囲気になる。

寅さんはこれまでも恋した女性のために、会社に勤めようとしたり「何か」になろうと目指すことがあった。
今回のお坊さんという職業は、わりと寅さんにとって適性の高いほうの職業かもしれない。もちろんそれでも、身内は大変心配している。
「頭が悪きゃだめだ」と皆言うものの、博は「はなから馬鹿の人間だと決めつけるのは良くないんじゃないでしょうか
兄さんも頭がいい可能性があるんですから」…と諭すが、結局は寅さんをディスっていることには変わりない笑

寅さんの恋とお坊さんになるために奮闘する姿と、若者たちに恋愛指南をする様子という、寅さんお得意の(というかシリーズ恒例の)ネタであるが、決してマンネリというふうには捉えられることはないだろう。
お坊さんの格好やキャラクターがハマっている寅さんが面白いのはもちろん、博のきょうだいたちの久しぶりの登場とそのやり取りや、伏線がどんどん結ばれていくテンポの良さもこの作品の魅力である。
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