岡田拓朗

転々の岡田拓朗のレビュー・感想・評価

転々(2007年製作の映画)
3.9
邦画らしい邦画。こういうのたまらない。
人との出会いの大切さや人の温かさ、出会いや会話ややりとりから生まれる微笑ましさ、小さな幸せを感じ取れる素敵な作品でした。
テーマは一期一会。

大学8年生の竹村文哉(オダギリジョー)は、親の借金を抱えており、返すあてもなく、孤独に一人暮らしをしていた。
そこに、借金取りの福原愛一郎(三浦友和)がやってき、借金をチャラにする代わりに、東京での散歩(目的地は実は決まっている)に付き合わせ、2人の散歩が始まることに。

そこで出会う様々な人とのコミュニケーションの中で、文哉が人に心を開いていったり、興味を持ち始めていくのがわかる。
一方で、福原は文哉との散歩を楽しんでいる、というよりも若いときの自分を見ているような感覚に陥っていたのか、2人の散歩がとても微笑ましくユーモラスだった。

その中でも一番印象的だったシーンが、麻紀子(小泉今日子)とふふみ(吉高由里子)と疑似家族になるシーン。
幼い頃から親に捨てられて、孤独に育った文哉が家族のような振る舞いやその温かさに触れ、カレーを食べたときに泣いてるけど、その理由を隠そうと必死なシーンがよかった。
オダギリジョー上手だった!

別れが近づいてることを悟る文哉。
初めは胡散臭く感じていたけど、徐々に福原と離れるのが寂しくなっていく。
その移り変わりと様子が何とも人間臭い。
最後にはホロリと涙が落ちそうになった。
東京の中にある美しさを感じれた。

罪を犯した福原と親に捨てられ孤独に暮らしていた文哉の物語で、シリアスな設定だけど、こんなにも温かく物語を組み立てれるんだなと感心した。
なんやかんや似た者同士の福原と文哉の2人の空気感、さらに出てくる面々が全員個性的なのがよかった。

やっぱりオダギリジョーのこういう役柄よき。
自分の中で一番好きな俳優は健在。
きょんきょんと吉高由里子も自然体でよかった。
岡田拓朗

岡田拓朗