HicK

ハリー・ポッターとアズカバンの囚人のHicKのレビュー・感想・評価

4.4
《新鮮で異色な3作目。前作に続きMy最高傑作》

【新たなテイスト】
監督の交代、ハリーたちの外見的成長、2代目ダンブルドア、変更された学校のロケーション、音楽は同じジョン・ウィリアムズだがほぼ新しい曲に入れ替わり、一気に雰囲気が変わった今作。校庭のロケ地が火事になったかなにかで公開日も遅れたような記憶が。とにかく今までとは別作品に近い、第2段階へ進んだ印象。

また、シリーズで一番ヴォルデモートの存在が薄く、ブラックたちが主役の物語でもあるので、刷新された雰囲気と相まってスピンオフ感もある。(悪い意味では無く、むしろ好き)。

【3幕それぞれの色】
前2作が長尺だったので、今作の142分はコンパクトにまとめたなという錯覚を受けてしまう。が、内容はこれまで以上に没入できるものだった。第1幕での新たな魔法世界の紹介はこれまで通りテーマパークのようなハリーポッターの世界を踏襲し惹きつける。そして今作のキモとなる第2幕のドンデン返し。そこから第3幕のタイムトラベルと画面から目が離せない。たぶん、全体におけるタイムトラベルシーンの割合は原作よりも増えてると思う。物語の色が変わる展開に引き込まれた。

【テンポの良さ】
場面のスイッチングも速めでとてもテンポがいい。音楽もリズミカルな物が多く、テンポの良さを引き立てる。ハリーたち、ティーンエイジャーとしての熱量に合わせた演出にも感じ、ホラー要素はありつつもどこかポップにも感じてとても見やすかった。

【その他演出】
全てを自分流に変えた監督。衣装、ロケ地、小道具、演技など前作から変えてきている。画作りは所々にMV感もあり、どこかティム・バートンっぽさも感じる。主要生徒キャラの髪型や着崩し感も監督からの提案らしく、ティーンムービー色も追加されてる気がする。

【ちょっと関係ない話】
くだらない話だが、ピーター・ペティグリューがネズミから人間に戻る時には服を着ている。反対にネズミに変身する時には服を脱ごうとする。おかしい(笑)。

演技面では、ルパートやエマの演技力が増しているのに対しダニエルは取り残されてしまった感がある。でも受け身的な役なので難しいところ。同年代の比較対象が近くにいる分、ちょっとかわいそう。

【総括】
今作は今までのダークファンタジーに青春要素が加わりどこか清々しくも感じる作品だった。ハイペースなテンポと3幕それぞれが異なるテイストの内容であっという間に楽しめた。前2作のテイストをいい意味で裏切り、多分シリーズ内でも異色な存在。だからこそ、シリーズの醍醐味が詰まった「秘密の部屋」と新鮮な今作が個人的に一番好き。
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