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トガニ 幼き瞳の告発のmireiのレビュー・感想・評価

トガニ 幼き瞳の告発(2011年製作の映画)
4.0
「トガニ 幼き瞳の告発」ファン・ドンヒョク監督 2011

"トガニ"というのは韓国語で"坩堝"という意味がある。
この作品は韓国で実際にあった話であり、元々は本である、そしてその本の内容が映画化したということになる。韓国は現実にあった話を映画化する事がとても多いが、今回現実にあったものはとても観てはいられないものだった。
聴覚障害者の子供達がとある田舎の学校に集まっていた、聴覚障害専門の学校、本来なら専門の学校に行けば気持ちを分かってくれない生徒等からのいじめを受けることもないだろう、そして聴覚障害者の為の授業を受けることが出来る。その為、その学校を卒業してもその人たちに合った仕事に入れるであろうし、一般的な社会にも結び付くことが難しい事ではあるだろうが、その学校に行っていた事によりスムーズにいく物事が進む事だってある。
なるべく彼らの分厚い壁を薄くしてあげるための学校だ。
だがしかし、実際に存在していたその学校ではとても醜いことが行われていた。その事実を突き止め、その醜い泥まみれた世界から子供達を救おうとしたのがソウルからやってきた新米の教師であった。
彼はある日体罰と言って暴力を受けている子供を見つける、その子供は自分のクラスの子であった。そしてその子供に色々と話を聞く。
なんと様々な教師から性的暴行を受けていたのだ、そしてそれは一人の生徒だけではなく、何人の生徒が受けていたという事、女子だけではなく男子までも性的暴行を受け、それを行っていた人の中になんと校長先生までもが存在していたという事。
新米教師VS一つの大きな学校という塊、後半からはこの戦いを観ていくことになる。何度も言うがこれは現実にあった話だ、そのため決して簡単な話ではなかった。ハッピーエンドに無理やり持っていく事もない、リアルに何が起きていたのか物事はとても難しくゆっくりと進んでいった。
子供たちは何度も泣き、示談金のために自分の子供を売る祖父母、その祖父母も、ただ孫を売りたい一心ではない。田舎で生きるお金がないのだ、そのお金の為なら苦しいが本来は許す事が出来ない人を許すことだって構わないと思ってしまう。悲しい世界が現実にあったのだ。
そして最終的に一人の生徒は自殺をしてしまう、救われなかった。
この世の全てに絶望してしまった。実際この映画はハッピーエンドでは終わらない、もしかしたらバッドエンドなのかもしれない。だが最後、暗いスクリーンに一つの文字が映し出される。「この戦いはまだ続いている」と、そうこの戦いはまだ続いているのだ。
裁判も行ない、何度も直訴している。いつか認められる日は来るのだろうか、聴覚障害者が人の優しさというものを聞くことが出来るのだろうか、実際に被害に遭った子供達は新米教師である彼と彼をずっと助けていた女性によってとても温かく愛される施設に送られている。そこで彼女達、彼らは幸せに暮らしているということだ。
それだけでも少し許された気がした。
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