映画鑑賞のおさる

東京物語の映画鑑賞のおさるのレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
3.9
家族の形を描いたドラマ。

1953年公開の作品で、内容も戦後8年目の日本を舞台にしている。つい最近までリアルに戦争を体験していた人たちが演技をしているのだと思うと、どんな気持ちで演じていたんだろうと思いを馳せたくなる。

また、劇中でも戦争で亡くなった親族の話が出てきて、多少なり反戦の思いも感じられる作品だった。しかし、それを露骨に訴えかける感じではないのが、今とは違うなあと感じた。単純にそれをテーマにした作品でないのもあるかも知れない。

メインのお話としては、田舎に住む老夫婦が、遠く東京で暮らす子どもたちに会いにはるばる出掛けてくるというもの。しかし、子どもたちは両親を些かぞんざいに扱い、かたや義理の娘が温かくもてなすというストーリー。

世代や置かれている立場・環境によって、観たあとの感想も変わってくるだろうなと思った。確かに、子どもたちはせっかく足を運んでくれた両親の相手もろくにしていないように描かれているので、イヤなやつに映るかも知れない。

しかし、子どもたちからしてみれば自分たちの生活もあり、それに手一杯というのもまた仕方のない話だと思う。そのあたり、すべてを汲み取ったかのような義理の娘の言動が観ている者にも感動を与えているのだと思う。

また、カメラワークが独特だったのも印象に残っている。セリフごとに話している役者を1人ずつ写し出すスタイルで、あまり見慣れないやり方なので少し違和感があったが、途中からだんだんと慣れていった。1人ひとりの表情をよく見せることで、話している人の感情をよく伝えるようにしているのかなと感じた。

特に、両親はほとんど常に柔和な表情で写し出されるので、すでに親を亡くしたような人が観れば、優しかった両親のことを思い出すかも知れない。あるいは、おじいちゃんやおばあちゃんのことを。あまりにも表情の変化が少なすぎて、途中笑ってしまうこともあったが(笑)

総評としては、戦後8年の製作とは思えないような今にも通じる普遍的なテーマを扱った作品で、一見の価値ありだと思う。何年かたって子どもが大きくなったときにまた観てみたい。