前方後円墳

歌え!ロレッタ愛のためにの前方後円墳のレビュー・感想・評価

歌え!ロレッタ愛のために(1980年製作の映画)
5.0
カントリー歌手、ロレッタ・リンの半生を描いた伝記映画。
この作品、一歩間違えると、ロレッタ・リン(シシー・スペイセク)のサクセスストーリーでしかないものになってしまうのだが、味わい深い、印象に残る作品になっているのはやはり彼女の普通の人としての苦悩、夫、ドゥーリトル・“ムーニー”・リン(トミー・リー・ジョーンズ)との愛、そして彼女の歌の素晴らしさがうまく混ざり合っているところである。
最初から最後までロレッタは大スターというよりも、田舎から出てきて知らない間に有名になってしまった女性ということがにじみ出ている。彼女の人柄は絶えず変わらないままなことに観賞者は安心感を覚えるのだ。
そして、何よりも一つ一つのエピソードがすばらしい。ロレッタとドゥーの出会い、父親との別れ、歌手になるきっかけ、ライバル、パッツィ・クライン(ビヴァリー・ダンジェロ)との友情と別れ、ドゥーの苦悩と彼の選択など、挙げだしたらきりがない。
時には大胆に、そして時には謙虚なメリハリのある絶妙な演出とシシー・スペイセクの素晴らしい歌声を観せた本作品は間違いなく傑作である。