こたつむり

みんなのいえのこたつむりのレビュー・感想・評価

みんなのいえ(2001年製作の映画)
4.0
♪ いすも机も柱も壁も
  僕らの家は新しくなる

今回が2回目の鑑賞でした。
三谷幸喜監督作品の中では一番好きです。

ただ、巷の評価は『ラヂオの時間』のほうに軍配が上がる…というのも理解できます。巧みに伏線を仕込んでいるわけでもないし、物語も一直線。収拾がつかなくなるほどハジける部分もありません。

でもね。じわりじわりと沁みるのですよ。
特に作品内のメッセージには共感するものが多く「うんうん。そうだよねえ」と頷きながら観てしまうのです(笑いの場面も何度か声に出してツッコむくらいに好きです)。

これは僕が近しい業界に身を置いているがゆえの贔屓目かもしれません。何しろ、専門用語に聴き馴染みがあるから、親しみを感じるのです。逆に言えば、厳しく観ているつもりなのですが、コメディとして考えれば流せるレベル。瑕疵は少ないです。

あ。でも、少しだけ気になったのが。
“センセイが最初に作った図面”に異議を唱える場面。低層住居専用地域の話をしていましたが、二階建てならば許容範囲だと思うのですが…なんて本当にどうでも良い部分ですね。

あと、配役も良かったと思います。
アナウンサーと芸人を中心に据えて、脇を本職の俳優さんで固める構図はまさしく“家を作るとき”と同じ形。田中邦衛さんも唐沢寿明さんも見事な存在感でした。

それに家を作る映画だから…ということで本当に建ててしまったのも豪胆な話。この時代はまだまだ予算に余裕があったのでしょうか。確かに映画の舞台であれば高く売れると思いますので、元手は回収できるのかもしれません(トイレが1階に3つもあると微妙ですが)。

まあ、そんなわけで。
贔屓目は差し置いても、三谷幸喜監督は“物を作る”映画が一番合っていると思った作品。芸術家と職人の違いだとか。何かを決めながら生きていくこととか。監督自身の奥深くから湧き出る“叫び”が詰まっていたと思います。

最後に余談代わりの疑問点。
本作でカメラがやたらと人物に近かったり、構図から人の顔が切れていたり…という演出は意図したものなのでしょうかね。あれに何の効果があったのか…ちょっと判りませんでした。
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