映画大好きザウルスくん

マキシマム・リスクの映画大好きザウルスくんのレビュー・感想・評価

マキシマム・リスク(1996年製作の映画)
3.9
元軍人にして現刑事のヴァンダムは生き別れの双子の弟の死を巡りロシアン・マフィアやFBIとの対決に身を投じていく…。とにかく注目なのは空手家ヴァンダムVS総合格闘家ステファノスによる最高に仕上がったタイマン格闘戦です🔥

後に『レプリカント』や『HELL ヘル』を撮るリンゴ・ラム監督がヴァンダムと初タッグを組んだ作品なのですが、既にヴァンダムの活かし方を熟知していたらしく観客がヴァンダムに求めているものをテンポ良く押さえた中々の傑作に仕上がっていました。この監督がヴァンダム映画で必ず意識してるもの、それはタイマン格闘戦です。恐らく『ブラッド・スポーツ』や『キック・ボクサー』などに代表される初期ヴァンダムの格闘技映画を観て「ヴァンダム主演作はやっぱ強敵との1対1のタイマン格闘戦を入れなきゃダメだよな」とちゃんと理解していたのだと思います。

今回そんな格闘面でのラスボスを務めたのはマフィアの用心棒役のステファノス・ミルトサカキスという方で、なんとこの方ギリシャ出身の総合格闘家にしてあのヒクソン・グレイシーに直接柔術を学んだ確かな実力の持ち主らしいのです!劇中ではヴァンダムと序盤、中盤、終盤とバランス良く3度対戦し、毎回異なった印象の格闘戦を繰り広げて大いに本作を盛り上げてくれました(しかもこの方、見た目は高身長の金髪というドルフ似なので『ユニバーサル・ソルジャー』感まで包括してくれていました)!

初戦では早速繰り出したヴァンダムの必殺技「ヘリコプターキック」を軽々とキャッチしてしまう怪物ぶりを見せつけ、2度目の対戦ではサウナで両者ほぼ全裸状態による鍛え上げられた肉体をバチバチにぶつけ合う格闘を披露(この露出多めでタイマンする雰囲気は初期ヴァンダム映画の試合シーンを連想させます)。初戦でキックをキャッチされたのが悔しかったのか、この2度目の対戦のヴァンダムは小回り型「ヘリコプターキック」や「ジャンピング・チャック・キック」のような突き刺し型キックをバシバシ決めていきます!そしてラストの3度目の対戦ではヴァンダムのダイナミックなキック技を警戒したのか、狭いエレベーター内にヴァンダムを誘い出した上で遂にステファノスの必殺技「ヒクソン仕込みの柔術」でヴァンダムを絞り上げていきます!途中で他の客が入って来そうになると「邪魔するな!」と追い返し、あくまでタイマンでの決着に拘る辺りも最高!結果的にステファノスが持ち込んだナイフを逆に利用したヴァンダムが勝ったのですが、もしそれが無かったらヴァンダムが負けていたとしか思えません…。かなりのポテンシャルを持っていたステファノスと、それをマキシマムに発揮させたリンゴラム監督が産んだヴァンダム映画史に残る最高の好敵手だったと思います👏

その他にもアクションの見どころは沢山あり、監督が香港から持ち込んだのであろうとにかく物を壊しまくるタイプの「ドンチャン騒ぎカーチェイス」が随所で繰り広げられたり、ザコ相手にヴァンダムが無双するシーンではボンネットに乗った相手を水平後ろ回し蹴りで倒すという明らかに『ハード・ターゲット』を意識したようなアクションも見せてくれます(ちなみに終盤ずっと黒のロングコートを着ていた辺りもジョンウー映画感が漂いました)。ラストではそれまで溜めに溜めていた射撃の名手という設定を活かしたストライク・ガンファイトにより下衆どもを全滅させる気持ち良いシーンもあり、終始ヴァンダム映画らしいスカッとするアクションを堪能させてくれました(火薬量もかなり多めだし、主人公が最後の最後でベレッタを手に入れる最高の展開とか…語り切れん!!!)🙌

ストーリー運びにはやや難がある部分も多く、特にヒヤヒヤした状況にも関わらず亡き弟の彼女の全裸が気になってしょうがないヴァンダムや、敵の管理下に置かれた状況で遂にセックスを敢行するヴァンダムなど、主にヴァンダムが欲情するシーン回りで映画の格下げもきっちりと行っていました…(これがあるからヴァンダム映画はいつでも軽い気持ちで鑑賞することができるんですけどね笑)。しかしアクションシーンがあれだけ上手くいっているのであまり気にならない方だし、香港ノワール仕込みの「漢の絆」描写も多数見ることができて、やはりヴァンダム映画として非常によく出来た1作だと思います🥳